歌謡界の大御所、橋幸夫が今年5月をもって歌手活動の引退を表明している。若い世代には馴染みが薄いかも知れないが、ある世代以上には国民的スーパースターである。デビュー曲「潮来笠」でレコード大賞新人賞を獲得し、瞬く間に大人気スターに。さらに「いつでも夢を」「霧氷」の大ヒットで2度のレコード大賞受賞、NHK『紅白歌合戦』17年連続出場、通算19回出場。股旅演歌から「恋をするなら」「恋のメキシカンロック」に代表されるリズム歌謡の世界まで幅広くこなす、まさに日本歌謡史に残る歌手なのだ。
その橋さんの「引退後も自分の歌を継承してくれる人はいないか。恩師で作曲家の吉田正氏、作詞家の佐伯孝夫氏の曲が歌われなくなるのは寂しい。」という気持ちを汲み、「夢グループ」の石田社長がこんな提案をした。ズバリ〝次世代の橋幸夫を探せ!〟素晴らし過ぎるアイディアではないか!本来なら橋さんと親しくしている演出家の私が思いつかないといけなかった。テレビ、ラジオの音楽番組担当者も恥じなければならない。橋さんに世話になっていながら気が付かなくて反省しています。
それにしても、昔のような歌謡界全盛期と違って歌番組も少なく、正攻法でメジャーになるのは大変。石田社長は、オーディションを繰り返し最終的には数名残して競わせるという構想もあるとか。歌舞伎、落語家の世界では2代目襲名はあるが、歌謡界での2代目襲名の成功例はあまり聞かない。「21世紀の石原裕次郎を探せ」もあったが成功とまではいかなかった。2代目橋幸夫は、全国から応募者を募り、5月1日浅草公会堂での橋幸夫ラストステージでお披露目される予定だ。
そんなことを考えていたら橋さんから電話が入った。「2代目橋幸夫のオーディションやるので審査員お願いします。」と。嬉しかった。こうなったら頑張りますよ!そうだ、純烈みたいに男前4人組も面白い。リズム歌謡では当然ダンスもしないと時代に対応出来ない。歌だけでなくダンスのセンスも重要な要素になる。古くからの橋幸夫ファンの期待に応える事も大切だ。性格は爽やかでないと。氷川きよしみたいな中性的な男性も捨てがたい。待てよ、男性にこだわる必要もない。AKBや乃木坂48みたいにHASHIGIRLSもいいかもしれない。4名に限らず「20人橋幸夫隊」でお客様に順位を決めていただくのも面白い!
私の妄想が止まらなくなってきた。どこまで実現可能か分からないが、昭和の若者が胸ときめいた流行歌を令和の歌手が歌い、恋をして、いつでも夢を見て、雨の中二人で歩く・・・なんて素敵なことか。
2代目橋幸夫!! 応募お待ちしております。
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■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。