ロサンゼルスの深刻な水不足、 迫りくる干ばつ危機

アメリカ101 第77回

ロサンゼルス・タイムズによると、カリフォルニア、とくに南カリフォルニアは、このところbone dryだそうです。「骨が干からびている」ような干ばつ状態を形容したもので、英和辞書の定義では「絶乾」とあります。「絶対乾燥」の略語で、カラカラに乾いた状態を表現したものですが、このところの好天で芝生や樹木が一段と青々として伸びている街頭風景からすると、干ばつと言われてもピンときません。しかし統計上では、昨年末から今年にかけての“雨期”の降雨量は平均値をはるかに下回っており、関係者の間で期待されていた集中豪雨という「March Miracle」も幻とあって、今年の夏から来年にかけて水不足が深刻化する見通しで、これに伴い農業などの産業用水だけでなく、住宅レベルで節水がこれまで以上に求められるのは必至です。

 

ロサンゼルスを含む南カリフォルニアでの雨期は11月から翌年3月で、その降雨量などの気象情報はダウンタウンにある南カリフォルニア大学(USC)構内に設置された観測機器で計測されています。そして今シーズン当初の昨年12月の降雨量は1.84インチ(46.73 mm,1インチ=25.4mm)でした。過去平均は2.33インチですから、出鼻で低い降雨水準でした。そして例年なら雨がよく降る1月と2月では、1月が2.44インチと例年並みだったものの、2月は微量で統計上はゼロにとどまり、「乾いた雨期」の様相を示していました。このため、干ばつを懸念する農業関係者を中心に、例年全米大学バスケット選手権が開催される3月の「March Madness月間」ならぬ「March Miracle」(3月のミラクル大雨)に期待する向きが多かったのですが、皆さんがご存じのように、1.4インチという期待外れとなり、結局今シーズンの雨量は4.55インチで、例年の雨量11.68インチの半分以下にとどまりました。

 

この干ばつ状態は南カリフォルニアだけにとどまらず、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、コロラド、ワイオミングといった南西部諸州に及んでいます。カリフォルニア州の場合は、昨年秋以降、高気圧が太平洋沿岸を蔽っているために乾燥した気象が続いているのですが、その背景には、太平洋赤道付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなるというラニーニャ現象の影響があるとのこと。このためアメリカ北部諸州では例年より気温が低く、雨量/積雪が増える一方、カリフォルニア州を含む南西部一帯では気温が上昇、乾燥状態が顕著となり、干ばつの可能性が高くなるというわけです。カリフォルニア州の場合は、干ばつや水不足の予兆として重視されているのが、大量の積雪で貴重な水源となるシエラネバダ山脈でのSnowpack(雪堆積/残雪)水準です。同山脈の山中にあるフィリップス・ランチ・ステーションに設置された残雪水準計で定期的な定点観測する積雪の高さが例年に比べてどの程度かで、春から夏にかけての同山脈水系の雪解けによる水量を予測することができるわけです。3月初めに州政府水資源局(DWR)が計測した最新の調査では、平均値の61%で、2年連続で夏季の干ばつ状態が予想されるとの結果でした。

 

このような干ばつが現実となる見通しを裏付けるさまざまな数字を受けて、州政府水資源管理委員会は3月22日付で農業関係機関、地方自治体などの関係組織関係者4万人に宛てた水不足の可能性があるとする警告書簡を発送、諸般の準備に取り組むよう求めました。具体的な対応措置として

①水温存措置

②灌漑地域の縮小

③放牧地域の管理強化

④水供給の多様化

 

などを指摘しています。カリフォルニア州では水資源の80%が農業用であり、アメリカ最大の農業州であることから、その給水制限は農産物価格にすぐに響くため、消費者にとって大きな関心事です。そして水不足が深刻化すれば、一般住宅での節水強化策や給水制限といった厳しい措置が予想される非常事態宣言の発令も視野に入ってくるため、今後の展開に目が離せないわけです。当面は州知事による非常事態宣言には至らないとみられますが、今年11月から来年3月にかけての次の雨期の降水状況次第では「メガ干ばつ」(Megadrought)もありうるとの見方もあり、気がかりなところです。

 


著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


 

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