新型コロナウイルスの発症確認から2年、 ワクチン接種開始から1年。いつまで続く?コロナ禍

 

アメリカ101 第114回

 

それは、まさに「どこまで続くぬかるみぞ」というべきでしょうか。中国・武漢を発生源として世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスのことです。感染防止、そしてウイルス退治の切り札として期待されたワクチンの開発が進み、イギリスで一般向けの接種が昨年12月8日に開始されて以来1年が経過しました。現時点では世界全体のワクチン接種率は少なくとも1回の接種を終えた比率は47%に達し、日本やアメリカを含む先進工業諸国では80%近くにもなっているのですが、感染抑え込みのカギである集団免疫(herd immunity)実現には至っていません。そして世界各国で、感染力の強いオミクロン変異株が新たな脅威となり、第6派、さらには第7派といった、それこそ際限のないコロナ禍への懸念さえ生じており、世界は先行きが読めない不安な状況下で新しい年を迎えようとしています。 

 

 武漢での新型コロナウイルスの発症が確認されたのは2019年12月8日。それから2年が経過したのですが、ウイルス退治をめぐる一連の動きは、いまや「デジャブ」(既視感)の様相を示しています。世界各国、特に先進諸国では、いったん感染拡大を抑制したかという状況で、一時はマスク着用やPCRや抗体検査、集会制限などのさまざまな規制が緩和されたのですが、ある程度の期間を経て新たな感染の波が顕著となり、再び規制を強化するという悪サイクルに陥ったかのようです。近代医学の発達で、世界的な規模での感染症については、その発症の把握からワクチンなどの対応策の確立、ウイルス退治といった手順で克服してきたのですが、今回は、そのような直線的な「線形」(linear)な経過とはならず、巡回的な「円形」(circular)のような経過をたどっていると指摘する専門家が出てきています。言ってみれば、「この道は来た道」というわけです 

 カリフォルニア州でも今年夏以降、徐々に感染が収束に向かっているかにみえたのは、皆さんが経験したところです。レストランでの飲食に関する制限が緩和され、スポーツ試合や人気歌手のコンサートといった多数の観客を集める大きなイベントの再開が進み、ワクチン接種やPCR検査の確認手続きも緩和/撤廃となりました。しかしここ数週間再び感染ケースが増加しているのに加えて、オミクロン株への懸念から、規制強化へのかじ取りが進んでおり、今月15日からは、州全域での屋内公共施設での今後1カ月のマスク着用を義務付ける規則が施行されました。 

 

 ロサンゼルス、ベンチュラ、サクラメントおよびサンフランシスコの各郡は今夏以来、それぞれ独自の屋内でのマスク着用を義務付けていますが、今回対象となるのは、着用規制のなかったサンディエゴ、オレンジ、インランドエンパイア各郡やセントラルバレー、カリフォルニア北部といった州人口の約半分を含む地域です。カリフォルニア州では過去半月で感染者が50%増を記録、入院患者も15%増えています。これを受けてCDC(全米疾病予防管理センター)は警戒体制を最高のレベル4に引き上げました。また規制緩和が進んでいたニューヨーク州も、入院患者数が今年月以来最高の3600人を突破したことなどで、週明け13日から1月15日までのマスク着用を義務付ける同様の規則を実施しています。 

 

 さまざまな規制が常態化し、またワクチン接種も、当初の1回から2回目の追加接種、さらには、今後4回目、5回目といったブースターが必要との見方もあり、確固とした出口戦略がないまま、同じような対応を繰り返すという悪循環が続くことでのコロナ疲れ、倦怠感、さらには極度の疲労で怒りが過度に募るといった精神面でのダメージを懸念する声もあがっています。「我慢我慢」のあとで、さらなる我慢を強いられる暗い歳末です。

 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(12/14/2021)

 

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