4000人が叫んだ「ワクチンは人殺しだ」 LAダウンタウンで「ワクチン完全接種義務化」反対集会

 

アメリカ101 第109回

 

それはまさにアメリカが現在直面する、さまざまな分野での国民の間での鋭い対立という構図の一局面だったと言えるかもしれません。ロサンゼルス市当局による厳しい新型コロナウイルス(COVID-19)対策が施行された週明け118日の午前、ダウンタウン中心部にある中央市庁ビル前のグランドパークで開かれた「ワクチン完全接種義務化」に反対する人々による大規模集会です。4000人超と推定される参加者たちは、口々に接種義務化に反対して、「FreedomFreedom!」(自由を!自由を!)と叫び、「Vaccines Kill」(ワクチンは人殺しだ)「Freedom Not Force」(強制ではなく自由を)といったプラカードを振りかざしていました。 

 さまざまな変異株があるCOVID-19への完全な治療方法が確立されていない現状では、感染防止を食い止め、その収束に向けた集団免疫を実現する医療面での効果的な方策がワクチン接種であるのは疑問の余地はありません。そして世界各国で医療関係者や公衆衛生当局が、宗教的あるいは医学的理由を除いては、その接種を全面的に推奨しています。ところが奇妙なことに、ワクチン開発では世界に先駆けて実用化を成し遂げ、接種に着手したアメリカでは、さまざまな理由で「ワクチン反対忌避」の動きがSNSを通じて広範囲に拡散しています。 

 アメリカは当初はワクチン開発、そして集団接種では各国をリードしてきたのでが、現在では接種懐疑論の高まりで接種ペースが落ちています。 

 グローバルなさまざまな科学関係データを収集、編集してオンライン上で公表する「Our World in Data」(本部イギリス)が11月当初に発表した「ワクチン完全接種者の国別比率」によると、接種率トップはスペインの80%で、以下韓国(76.98%)、日本(74.38)、中国74.26%)などとなっており、アメリカは57.25%(11位)にとどまっています。 

 そして注目されるのは、医療調査情報組織カイザー・ファミリー財団が今年9月に発表した、アメリカでのワクチン接種への反応を党派別に集計した調査結果です。それによると、民主党支持者の間で少なくとも一回接種を受けた比率が86%であるのに対し、共和党支持者では54%にとどまっています。さらに「接種は絶対忌避する」と答えたのは、民主党側がわずか5%なのに対して、共和党側は20%です。またデータリサーチ専門のモーニング・コンサルタント社による「自分の好みのメディア」の違いに基づく調査では、ドナルド・トランプ前大統領を一貫して支持する保守系フォックス・ニュースの視聴者の間では「接種忌避」が20%、接種率が59%です。一方リベラル色が濃いMSNBC視聴者では、それぞれ10%、73%となっており、党派色の違いが鮮明です。また教育水準が低い層ほど接種忌避や低い接種率となっています。 

 ワクチン接種を拒否する理由としては、接種効果への疑問 副作用懸念 治験が早急すぎた、といった医学面での疑問に加えて、今回のロサンゼルス市での罰金を含む接種義務化が「個人の自由を侵害するものだ」といったイデオロギー面での反発があります。今回の集会でも、「義務としての接種で自由が奪われる」「自分で自分を守るという考え方が弱まり、権力者の横暴が跋扈(ばっこ)している」といった参加者の意見をロサンゼルス・タイムズ紙が伝えています。さらには「われわれは共産主義者によるアメリカの権力奪取と戦っているのだ」といった反共スローガンを唱える参加者もあり、科学的に証明されたワクチン接種効果を否定するAnti-vaxxer(ワクチン反対派)がかなりの比率で存在する分裂国家アメリカの一端を浮き彫りにした集会でした。 

 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(11/12/2021)

 

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