どうやら私の車の趣味は世の中と逆行しているかも。巷では4WDブームでTOYOTAランドクルーザー、ベンツのゲレンデヴァーゲン、ジープ・ラングラーやワンボックスカーのTOYOTAアルファード、ヴェルファイアあたりが人気を独占している。現代の車なのでジャンルは違っても全ての車が快適仕様、当然安全対策も抜かりがない。これらの車は芸能人も多数所有している。テレビ局の駐車場の華やかなこと。
しかし私の食指は全く動かない。その理由をいくつか挙げると、先ずは価格が高過ぎる。車体が大き過ぎる。東京の街に溢れ過ぎている。顔がいかついというか怖い。車に乗っていて後ろにつかれると煽られている気分になってしまう。そんな訳でどうしても小さくて可愛い車が好きになる。それも1960年代のイギリス車が大のお気に入り。
現在モーガン、ミニモークと2台の古い英国車を30年以上所有しているが、先日とあるお店で運命的な車と出会ってしまった。その名もモーリス・マイナー・トラベラー(1971年式)。モーリス社は現存していないメーカーだが、初期のミニクーパーの誕生に多大な影響を与えた老舗の自動車メーカーとして知られている。ボディタイプは2ドアのステーションワゴン。基本設計が1950年代で、今では想像もつかないような、ボディ後部側面とテールゲート外側に木枠が貼り付けてあるなんとも良きイギリスらしいスタイル。そもそも木枠に使われている木は木目調ではなく「本物の木」のため、高温多湿な環境で手入れを怠るとキノコが生えることもある。
とんでもない希少車のため、東京で走っている姿を見かける事はほどんどない。英国車に詳しい店のオーナーに聞くと「それでも3~4台は都内に生息しているのでは」と。以前からいつかは乗ってみたいと思っていた車と遂に出会えた。
そうなんです、後先考えずに買ってしまいそう。苦労するのはわかっています。クーラーは無い、雨の日の運転も無理、ヘッドライトの明かりも頼りない、時速80km以上は出せない、長距離ドライブは勇気がいる。しかし試乗した感触のあまりの楽しさにディズニーランドのパレードに参加した気分になってしまった。
こんな気持ちにさせてくれる車はめったにない。現在木枠の修理の最中で完成まで2か月はかかるらしい。クリスマス大好きな私としてみれば12月に乗れれば大丈夫なのでそれまで待っています。内装にタータンチェックを入れたメリークリスマス仕様にと夢は膨らむ。
以前紹介したLAドジャース仕様のTOYOTA C+podに続くハッピー車。私のヘンテコ車選びは止まりそうもない。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

