【ロサンゼルス27日】<※8月4日アメリカ101コーナーより>
今回のコラムから、「先物買い」として、日本では無名の、あるいは、それほど知られていない「次の次のアメリカ大統領」とも目される「大統領の器」との評価が高い政治家を不定期に、そして随時取り上げていきます。
初回は、ジョー・バイデン現大統領が、2020年の大統領選挙で有力副大統領候補3人のひとりとして考慮したミシガン州知事グレッチェン・ホイットマーです。2018年11月に州知事として初当選、4年後の2022年には、共和党の対立候補に2桁の大差をつけて再選を果たしています。
全米で知られる政治家となったのは、バイデンを大統領候補に指名した2020年の民主党全国大会での演説です。地元デトロイトの自動車産業の振興にバイデンが大きく貢献したと強調するとともに、当時のドナルド・トランプ大統領による新型コロナウイルス感染対応を厳しく批判した演説でした。これに対してトランプは、ツイッターで「ミシガン出身のあのオンナ」(that woman from Michigan)と反発。これが逆効果となって、かえってホイットマーの知名度を高めることとなりました。
またミシガン州で州知事として陣頭指揮をとった、その感染対策が効果的だったとして、同年5月のニュース週刊誌「ニューズウィーク」が巻頭記事として取り上げたことも、ホイットマーの存在感を強めました。さらには、NBCテレビの人気コメディショー番組「サタデーナイト・ライブ」では2回にわたり、人気コメディー女優がホイットマーに扮してギャグ出演したのも、知名度を上げるのに貢献したようです。
ミシガン州ランシング生まれで、ミシガン州立大学で学士号を取得したあと、同ロースクールを修了したあと、州議会の下院議員、上院議員を経て、インガム郡検察官を務めるというコースをたどり、2018年に州知事選に出馬、当選、再選と、同州の主要な公選ポストを経験したという女性政治家です。知事再選後の時点では、バイデンが2024年の大統領選挙に出馬しない判断を下した場合には、後任として自分自身が出馬する可能性を考慮していたようですが、バイデンが再出馬の意向を固めたことで、その可能性は消えました。
そして2020年10月には、ミシガン州の極右組織によるホイットマー誘拐計画が発覚、ひと騒動となります。FBI(連邦捜査局)がウォルバリン・ウォッチメン(Wolverine Watchmen)と名乗る民兵組織に属する6人の身柄を確保、起訴したという事件で、FBIが事前に探知していたとのことです。
ホイットマーは、事件を未然に防いだ司法当局に感謝の意を表明するとともに、ドナルド・トランプ大統領が一連の極右グループに対して厳しい対応を示してこなかった態度が事件の引き金となったと批判しています。
バイデンは副大統領候補選びの最終段階で、有力候補4人のひとりとして、カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)、スーザン・ライス前国連大使と並んでホイットマーを名指していましたが、ハリスに落ち着いた結果、バイデン政権の中枢への参加はなりませんでした。だが、まだ51歳という若さで、ホワイトハウス入りを狙うチャンスは複数回あり、今後とも「大統領の器」としての存在感をキープすることになります。