アスレチックス藤浪晋太郎投手が何やらここの所、調子が良い。先日も5試合連続無失点、毎試合160キロ台連発、力強いフォーシームを立て続けに投げ込み相手バッターを翻弄している。まさに「シン・藤浪晋太郎」誕生なのだ!
NPB時代からの課題だった制球力。好投していたと思えば突如乱調となり四球を連発、その後に痛打を食らってKOされるシーンを私たちは阪神時代に嫌と言うほど見てきた。藤浪のメジャーリーグ挑戦宣言を受けて、ほとんどの野球ファンは彼の活躍を懐疑的に捉えていたのでは。
案の定メジャー開幕当初は相変わらずのノーコン、打たれ放題、防御率も天文学的な数字になり、ネット上の評判もさんざん。「このままでは1年契約のアスレチックス残留は無理」「監督・コーチの意見を聞いてないのでは」「そもそもメジャー挑戦なんて身の程知らず」「得意な決め球のストレートがストライクにならない」など、批判のオンパレードになってしまった。アスレチックスのコッツェー監督も「フジは直球の制球に苦しむ登板が続いている。直球でストライクを取る自信がない状態で投げている。」と指摘。万事休す、誰もが「藤浪メジャー失格」と感じる最悪の状況となった。球団側も先発を断念し敗戦処理投手へと降格させた。
開幕以来日米メディアは、エンゼルス大谷翔平選手の投打大活躍を連日大々的に報道し、日本のファンも藤浪晋太郎の存在すら忘れていたのでは。…このまま夏になる頃には消えていくと…。ところがまさかの(失礼)活躍!散々冷ややかな目で見ていた地元メディアも、復活要因は「監督・コーチのアドバイス」「8回あたりからの登板の気軽さ」「メジャー野球に慣れてきた」と絶賛。
いろいろ要因はあるが、1番は藤浪の「精神的な打たれ強さ」ではないか。甲子園の阪神ファンの熱狂的な応援、好投した時は称賛を浴びるが、四球で自滅して負けた時は夜の街も歩けない程のえげつない罵声、それに鍛えられた精神力。恐らく阪神タイガースで一番罵倒された選手だったのでは。そうなんです、藤浪はターミネーター、不屈な精神を持つ男!
日本でも簡単には出せなかった100マイル(161キロ)だが、8月には165キロ超えを期待されている。大谷翔平選手、レッドソックス吉田正尚選手の応援はもちろん、藤浪選手もよろしく!但しこの記事が掲載される頃、活躍しているかは全く確約出来ない。もしかしたら電撃トレードされているか、マイナーリーグに降格しているかも。予断を許さない、それがFUJINAMIの魅力なのだ。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。