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初主演・初脚本映画の舞台裏(心境編)
2月19日の記事「『演じる』と『書く』の両方」で予告させていただいた通り、今回は2024年公開の映画『しあわせなんて、なければいいのに。』について書かせて頂きます。この作品では、私自身が脚本と主演の両方を務めさせて頂きました。そのときの経験や思いを、今日はお伝えしたいと思います。
お話を書くこと自体は昔から好きで、思い返すと幼稚園の頃から友達と交換絵日記のような形で脚本を書いては、校庭で演じていました。
中学生で観たドラマ「カルテット」に影響を受けて演技の道を本当の意味で志すようになったのですが、坂元裕二さんの紡ぐ言葉、話し方が大好きで、もっとキャラクターを理解したくて、(そしていつか坂元さんの言葉をスクリーンで話したくて、)坂元さんのシナリオブックは何度も繰り返し読みました。
ですが、書きたいという欲がなかったどころか、脚本を書くという行為が大きすぎる壁のように思えていた当時の私は、映画制作企画のピッチはしてみるものの、脚本自体は才能のある方にお任せしたいと他人本位になっていました。
そんな中、自分で面白い作品が書けたら考える、と言われたことで必死に初めての長編映画の脚本を書くことになるのですが、当時の私の拙い精一杯を、大尊敬している高橋栄樹監督をはじめとした才能溢れるクルーのみなさまが、とても素敵な作品にしてくださいました。
今度は俳優として挑んだ撮影期間、印象に残っているのが、脚本を担当していたことを忘れられたことです。自分で書いたお話ではありましたが、高橋監督が本当に誠実に私の脚本を読み込み、噛み砕き、打ち合わせを重ねてくださったことで、徐々に安心して一言一句を手放し、お任せすることができました。
そのおかげで、撮影当日は役だけに集中して、世界を全身で飲み込んで、脚本家としてではなく、役として素直に台詞を吐き出すことができました。そんな環境を作ってくださったクルーのみなさまには本当に感謝しています。自分の頭で作った世界を手放して、役としての目線で全てを新しく受け入れることができたのです。私が演じた役と撮影中の自分が図らずもリンクしているように感じる瞬間もたくさんあって、不思議な経験をさせて頂きました。
初めて映画館で上映された日に私も一緒に観ていたのですが、そこで初めてパーソナルな話を書いていたことに気付き、ひとりよがりになってしまったかなと不安になりました。でも、客席のどなたかの鼻を啜る音や涙を拭う手元などに気付いたときは、俳優としても脚本家としてもすごく嬉しかったです。
だから、この宝物のように胸にいつも抱えているこの経験が、私に大きな夢を抱かせてくれるようになりました。最近は演技のクラスに加え、脚本のワークショップにも参加し始め、勉強しながら書いてみています。心から書いて、心から演じた作品を再びみなさんにお届けできる日が待ち遠しいです。

(3/4/2026)

北川 悠理 (きたがわ・ゆり)
幼少期をロサンゼルスとサンディエゴで過ごし、日本に帰国後、2023年までの約5年間アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーとして活動。卒業後、単身渡米。UCSDに留学し、演技と映画制作を専攻。2025年、本格的にLAに拠点を移し演技の専門学校を修了。映画や舞台の脚本執筆、書籍の出版など新米作家としての一面も。
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