【ロサンゼルスで暮らす人々】教育は近道ではなく遠回りを 育ててもらった日系コミュニティに恩返し

LA暮らし

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加藤直太郎
Naotaro Kato


HOPEラーニングセンター CEO / Director

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■バイリンガル教室『HOPEラーニングセンター』の加藤直太郎さん。Instagram(@learning_at_hope)

「もともとはロードアイランド州で数学の高校教師になろうと思っていました。けれども人生とはおもしろく、そうはなりませんでした。大学時代、毎夏、地元に帰って日系サマーキャンプでアルバイトをしていたんですね。ぴったりな仕事でした。そのアルバイト先の恩師から引退に伴いこの場所を譲りたいというお話を頂いて。それがすべての始まりです」そう語る加藤直太郎さん。子供達からは「なり先生」の愛称で親しまれている。2022年にロミータでバイリンガル学習教室『HOPEラーニングセンター』を設立し、現在までに240名の生徒を指導した。ディレクターとして教師として奔走する彼に話を伺った。

 1998年ガーデナ生まれ。日本人の両親のもと、家庭は日本語、外では英語の環境で育った。母は「教育には体験が大事だ」という信念を持ち、幼い加藤さんを色々な場所へ精力的に連れて行ってくれた。自然公園、水族館、天体観測。それらは一見遊びの延長ではあるが、のちの学習に自然につながり、理解を深めた。「塾やドリルのように効率を求める学びばかりに偏ると、教育の本質を見誤ってしまう。僕はそれを母から学びました」


 トーランスのNorth High Schoolでは多彩な体験をした。クロスカントリー、演劇、アカデミック・デカスロン(学業的十種競技:アメリカ版高校生クイズ大会)。学校というのはすばらしい。原則無料で体験し放題なのだから。多様性を大事にしている学校ゆえ『Multicultural Day』のイベントは非常に盛り上がった。日本人だから日本クラブを紹介するということにとどまらず、興味のある文化に飛び込むことができる環境だった。加藤さんはヒスパニッククラブ・ポリネシアンクラブの友人と混ざり、ダンスに挑戦。まさしく壁を感じない教育を体で学んだ。

 卒業後はブラウン大学に進学。大学のあったプロビデンス市のアダルトスクールで英語を教えるボランティアをしながら教育学を専攻し、ロードアイランド州の高校数学教員免許を取得。中南米の人が多く通うスクールで英語を教える日々は刺激的で、彼らの温かさに触れながら街の魅力にすっかり取り憑かれた。

 けれどもアルバイト先の恩師が引退することがきっかけで場所を譲り受け、「いつかは日系コミュニティに恩返ししたい」という気持ちと重なり、HOPEラーニングセンターを開設する決心をした。23歳のときのことだ。HOPEの信念は「親密な指導・楽しい学び・多言語/多文化な空間」。4歳児から高校生まで、日本にルーツを持つ子供達へのアフタースクール・サマーキャンプ・日本語指導を提供している。「なり先生」の教育理念がつまったすばらしい学校を一度訪れてみてはどうだろうか。

■紙すき体験。HOPEは「体験を通した学び」にフォーカスしている
■サマープログラムには力をいれており、HOPE卒業生の高校生がボランティアに来てくれる

(10/29/2025)

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