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内田尭
Takashi Uchida
映画編集者/映画監督
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Instagram @takashi_uchida
「東京で生まれ育って、中学受験をして、ある種のレールに乗っていたわけですが〝良い点取れたからオッケー〟みたいな価値観にはずっと疑問を持っていたんですね。それは違うんじゃないかと。心の底から好きという感情が湧くことをすべきじゃないかと思ったんです。僕にとってそれは映画でした」こう語るのは映画編集者で映画監督の内田尭さん。
1988年東京都武蔵野市出身。〝尭〟という名は太陽が昇っていく心の有り様をイメージして両親がつけてくれた。父は歯科医で、母は専業主婦。2つ下に妹、8つ下に弟がいる。小学4年から塾に行き、順応していた。「学校以外の人間関係が広がるのが楽しかったですね」しかし、反動が来たのか、志望校合格後は全く勉強しなくなった。定期考査の結果が悪くても気にならなかったし、進級さえできればよいと考えていた。中2の時、雑誌におすすめ映画として紹介されていた『ニューシネマパラダイス』のラストシーンを観て「自分がやりたいことはこれだ」と直感。中高の文化祭では自ら提案してクラスメイトを巻き込み、監督として自主映画を作るも「考えてみれば男子校だから演者が男子しかいないわけですよね。やりたい事と自分が作れる映像のギャップに頭を抱えていました」と振り返る。中高時代は映画のキャリアに進むと決断する時間だった。高3の時、親に相談して「海外に行くならサポートを続ける」と言ってもらえた。
ニューヨークの小さな街にある州立大学に留学。専攻は文化人類学。映画を作るためにはあらゆる経験が必要と考え、小さな街を選び、映画学科ではない学問を選んだ。4年後の2012年フィルムスクールの名門であるUSC大学院に入学。満を持して実写の映画制作を専攻した。卒業後、USC時代の知人から1本目の映画編集を頼まれた。本来なら1ヶ月間あるべきだが、ファーストドラフトを1週間で仕上げた。編集が的確で早いと評価を得たことが引き金になったのか、結局キャリア1年目で長編映画の仕事が3本も来た。映画編集という仕事は、出来上がった映像を完全に客観的な視点で捉え直し、シーンを入れ替えてストーリー自体を再構築し、より説得力や発見のあるストーリーに組み替えていく仕事だ。内田さんのもとには、映像だけが膨大にあって、繋げて映画にしてほしいという依頼も来るそうだ。彼の客観的な視点、徹底的に考え直す姿勢が映画の質を上げるのだろう。近年ではYOSHIKI監督作『Underthe Sky』の映像編集、パンデミック後は自身による監督作の制作も始めている。「次にやろうと思っていることはアメリカに暮らす日本人の日常を切り取ったスケッチのような映画です」


(5/22/2025)
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