筆者・志村 朋哉
南カリフォルニアを拠点に活動する日米バイリンガルジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスターなど、米地方紙に10年間勤務し、政治・経済からスポーツまで幅広く取材。大谷翔平のメジャー移籍後は、米メディアで唯一の大谷番記者を務めた。現在はフリーとして、日本メディアへの寄稿やテレビ出演を行い、深い分析とわかりやすい解説でアメリカの実情を日本に伝える。
通信010
パーティーとパレード
日本とは一味違うアメリカのお正月
アメリカ流の「派手で賑やか」な年末年始を体験してみよう!
アメリカ生活が長い方ならご存知かと思いますが、こちらの正月は日本とは雰囲気が異なります。
多くの日本人にとって正月は、一年で最大の行事。地元に帰省して親族が一同に介し、初詣やおせち料理やお年玉などの伝統行事を楽しみながら、「年の始まり」を厳かに迎えます。アメリカ人にとっての感謝祭やクリスマスの感覚に近いといえるでしょう。
それに比べて、アメリカではクリスマスが終わると、感謝祭から続いていたホリデームードは収束します。1月1日だけ休みで、2日には出社という人も多い。元旦よりも大晦日の方が大きなイベントで、家族や友達で集まってパーティーをしたり、バーやクラブに繰り出したりして、お酒と悪ふざけを交えた夜を過ごします。
最も有名なのが、ニューヨークのタイムズスクエアでのカウントダウンイベントで、全米にテレビ中継されます。巨大なクリスタル報時球が1分かけて降りてくる「ボールドロップ」は、今やアメリカの年越しの象徴です。初めてボールドロップが行われたのは、1907年の大晦日で、それ以降、年を追うごとにより大きな群衆が集まるようになりました。
カウントダウンの瞬間には、花火が打ち上げられ、大量の紙吹雪が振りまかれ、恋人やパートナーがキスを交わします。真夜中のキスの慣習はドイツ移民が持ち込んだと言われており、大事な人との関係をより深めて幸せになる、新しい一年で孤独を感じないようにといった意味があるといわれています。
私も20年前にタイムズスクエアのカウントダウンに参加したことがあります。世界中からやってきた人々と一体となってお祝いできたのは良い思い出ですが、真冬のニューヨークで7時間以上もトイレに行けずに待ち続けるのは、一生に一度で十分だと思いました。
ちなみに、アメリカでは、新年になると「New Year’s resolution(新年の誓い)」を立てる文化があります。「ダイエットする!」「お金を貯める!」など、自己改善の目標を掲げるのが一般的です。この影響で、1月になるとジムが混雑するのはアメリカのあるあるネタです。
ローズパレードはLAの伝統
ニューヨークのカウントダウンに引けを取らないくらい有名な年末年始イベントが、元旦にパサデナで行われるローズパレードです。1890年に始まり、美しい花で飾られた豪華な山車やマーチングバンド、乗馬チームが、数十万もの観衆が見守るコロラド通りを練り歩きます。全米に生中継され、前夜のパーティーで疲れた人も、自宅のテレビでのんびりと見ることができます。タイムズスクエアのカウントダウンを「紅白歌合戦」に例えるなら、ローズパレードは「箱根駅伝」のようなものでしょう。
パレード後には、パサデナのローズボウルで大学フットボールの試合が開催され、スポーツファンにとっても新年のビッグイベントとなっています。今年は、オレゴン大学とオハイオ州立大学が対戦しますので、両校のグッズを身にまとったファンをそこら中で見かけるはずです。
パレードには、日本からのマーチングバンドも毎年、出場しています。今年は、オレンジ色のユニフォームに身を包み、ステップを踏みながらスウィングジャズの代表曲「シング・シング・シング」を演奏することで知られる京都橘高校が出場します。世界中に熱狂的ファンを持つほどの人気ぶりなので、ぜひ注目してみてください。
ここまでアメリカの一般的な年末年始の過ごし方を説明してきましたが、様々な民族が集まって暮らすアメリカでは、結局のところ過ごし方も多種多様です。お餅やおせちを食べるなど、伝統的な日本式の正月を過ごす日系人の方もたくさんいます。そんな日本式の正月が恋しいという方は、リトルトーキョーでの元旦イベントに足を運んでみるのもいいでしょう。
読者の皆さんも、どうぞ良いお年をお迎えください!
(12/23/2024)