街なかにあらわれるカモフラージュツリー|知って楽しい豆知識VOL. 12

 ロサンゼルスの405フリーウェイを車で北方面に走っているとサンタモニカ近くで、右側に突如として見える背の高い木。カリフォルニアならではのヤシの木ではなく、どちらかといえば、スギの木に似た形の木。オーナメントを飾るとクリスマスツリーにもなりそう。

 しかし、この木、葉や枝が均等に生えて立派に見えるが、整然とし過ぎている。さらに、深緑の葉っぱは全く枯れていないのに、みずみずしさがこれっぽっちも感じられない。おまけによく見ると、葉や枝のすき間から鉄の棒のようなものがみえる。

筆者撮影のカモフラージュツリー。

「まるで偽物のような木だ」

 そうなんです。この木はアメリカ人から「フェイクツリー(偽の木)」と呼ばれたり、「カモフラージュ」などと、様々な呼び方をされているもので、決してしまい忘れて放置されたクリスマスツリーでもない。

 一体なぜそんな、フリーウェイからも見えるほどの背の高い巨大フェイクツリーを立てなければならないのか・・・。 その正体は、世の中の皆さんが使っている携帯電話のアンテナ塔なのだ。でもなぜそのアンテナをニセの木や葉っぱで覆わなければならないのか。  

 この携帯タワーの木は、今や都市部から郊外までアメリカ全土にわたって点在しているのだが、もともとはロサンゼルスで90年代初めに設置が開始したといわれている。携帯電話が世の中に登場し始めると同時に、大手電話会社が次々と携帯電話アンテナのタワーの設置を開始。しかしここで、周辺住民から反対意見や不平不満が勃発。その反対意見とは「むき出しのアンテナが街や自然の景観を損ねる」「人々に精神的ストレスを与えかねない!このうえない視覚汚染だ!」

 そんな経緯もあり現在、市によっては、携帯タワーを木などに変装させることが義務付けられている。アリゾナ州ツーソンの企業「ラーソン・カモフラージュ社」では、このカモフラージュツリーの制作を専門に請け負い、全米に提供。もみの木タイプのほか、ヤシの木タイプ、サボテンの多いアリゾナではサボテンタイプのカモフラージュツリーも人気。

 街なかを歩く機会があれば、ぜひこのフェイクツリーを探してみてはいかがでしょう。

(9/6/2023)

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