昭和時代のビルをフルリノベーション 遊び心にあふれた趣味と生活の拠点|CalマガジンHOME&INTERIOR- VOL.10

VOL.10
昭和時代のビルをフルリノベーション
遊び心にあふれた趣味と生活の拠点

1階部分は元々塗装会社の駐車場兼倉庫だった部分。天井のブラケットライトは、70年ほど前に備えられたと思われるヴィンテージ照明だ。床面はモルタルで模ったタイル風にリノベーション時に仕上げたもの。デザイン住宅メーカーである「カントリータウン&カンパニー」が手がけたT邸。ベースとなっているのは「ナチュラルデザインハウス」というシリーズだ。

快適さを求めるならば、新築物件を住まいとするのが得策だ。古い建物は少なくとも住宅性能という面では新築物件に劣ることが多い。それでもなお古屋を住まいとする人は、家や物に対する価値観がそもそも異なるのだろう。KATSUさんもまた、築70年近い物件をフルリノベーションし、内外装に自身の趣味を反映させた個性あふれる住まいを完成させた。新しい建物にはない、古屋ならではのディテールに魅了されたひとりである。

OWNER KATSU
BUILD 1955/RENOVATION 2017/LAYOUT 1LDK

元々はマンション住まいだったというKATSUさん。たまたま近所に売りに出されていた古いビルがあったことから生活の拠点とすることを決意。知人に依頼して図面を作成し、約3ヶ月かけてフルリノベーションを施した。現在は1階の土間スペースを趣味兼ワークスペースとして活用。2階を生活の拠点としている。
Instagram @katsu_fj

1955年(昭和30年)建築という古びたビルは、元々塗装会社が倉庫兼事務所として使用していたものだ。このため一般的な住居とは異なり、内外装は独特な設計になっていたという。照明や配管類も当時のオリジナルがしっかりと残されており、そのユニークなディテールに惹かれたKATSUさんは、7年ほど前にこの物件を入手。建築士に図面を仕上げてもらい、実作業は友人・知人らに手伝ってもらいながら、約3ヶ月の期間を経てフルリノベーションを行った。

当初は雨漏りがひどく、内外装も傷んでいた物件だったが、自分たちで手直しをしたことで、古びた雰囲気をうまく残しながら、スタイリッシュな空間へと変身。現在は1階を仕事用のワークスペースとし、2階は家族4人が暮らすワンルームの居住空間としている。

「元々住居じゃないので、色々と面白いんですよ。例えば天井は2・8mとかなり高めに作られているし、可燃物(塗料)を扱う会社の建物だったので、耐火性能も高く作られています。1階で使っている照明も60年以上前の耐火構造用ダウンライトです」と、KATSUさんは語る。

中学生の頃からスケートボードにハマり、現在はサーフィンを趣味にするなどカリフォルニアのカルチャーにどっぷりと浸りながら歳を重ねてきたというKATSUさん。長年スニーカー業界やアパレル関係に携わっており、1階は前述した通り、仕事で培った経験も活かした趣味のプライベートスペースとして改装。壁はブルックリン風のモルタル造形やカリフォルニア風の板張りにするなど、遊び心にあふれた空間に仕上げている。

 2階の居住スペースは天井の高さを生かした大空間とし、目の前の公園を一望する大きなリビングダイニングを中心とした間取り。さらに、かつて給湯室だった小さなスペースに子どもたちの勉強スペースをしつらえるなど、まるで秘密基地のようなギミックも加えている。

 このビルにはじつは屋上もあるのだが、動線が悪く活用できておらず、今後は簡単に上り下りできる階段を設置するなどして、屋上も上手に活用していきたいという。「古い建物なので、断熱材がちゃんと入っていないんです。だから冬は寒くて、夏は暑い! それでも時を刻んできた古い建物ならではのディテールがあちこちに見られるところに満足しています」。

 アメリカでは古びた物件を自分たちでリフォームしながら住み続けるのが一般的。古い建物の価値が、時を刻んだ分だけ高くなることも珍しくない。70年近い年月を重ねてきた古いビルに、新築の建物にはない価値を見出したKATSUさん。物に対する考え方もまた、アメリカのライフスタイルやカルチャーから感化されたものなのかもしれない。

PHOTO & TEXT_Kazutoshi Akimoto  秋元一利

株式会社CLASSIXが発行する“カリフォルニア生活”を提案するマガジン。
カリフォルニア好きのバイブルとなっている!

Website: www.calog.net
Instagram: cal_magazine

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