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久しぶりに金沢に行って来た。古都の佇まいが丁度良いのだ。京都のように街が大きく無く、奈良ほどの重い歴史も感じない。浅野川の流れは時を忘れさせてくれる。年に2回くらい行きたい愛すべき街だが、最近新幹線のチケット、ホテル、旅館の予約が取りづらい。以前から人気の観光地ではあったが、コロナ感染が5類になって以来、外国人観光客が大挙して訪れているからです。しかしコロナ自粛期間は観光地でありながら静まり返った街を見ていたので、賑わいは嬉しい。インバウンド大歓迎。
それにしても新幹線、混んでいた。満席。早朝の列車はコーヒーを飲む人、お弁当を頬張る人、パソコンに向かう人、仲間と盛り上がり笑い声が絶えないグループなど、通勤電車とは違う華やかさだ。ところが洗面所辺りでトラブル発生!どうやら若い女性がスッピンからのお出掛けモードの化粧を鼻歌交じりで始めたらしい。曲名は定かではないが鼻歌は10分を経過…。私の勝手な予想では完成までに更に時間を要する。洗面所を独占しているのだ。
その時、別の女性の声が聞こえてきた。やや甲高い声で「すみません、アノ~、私だって化粧したいんですけど~。何とかなりませんかね。」あくまでも丁寧言葉だが苛立ちは隠せない。しかし、背後から聞こえるその声に返事もせず無視。さすがに鼻歌は止めたが。黙々と鏡に向かい完成へと突き進んでいるのでは。しばし沈黙の後「すみません!アノ~私だって化粧したいんですけど~何とかなりませんかね!」と第一声と全く同じセリフながら先ほどとは違う低いトーン。再び沈黙…。
ところで、なぜ私がこの緊張したやり取りをこうもリアルに知っているかというと、実は洗面所横のトイレにず~っと座っていたからだ。無性に二人の顔が見たくなりトイレのドアを開けた。ちょうどその時、化粧半ばの女性が相手を睨みつけながらゆっくりと現場を後にしたのです。私としてはチョット拍子抜け。心の中では、女同士の取っ組み合いが始まって、しばし観戦し、頃合いを見て仲裁に入ろうと妄想していた。残念。それと、睨みつけながら去っていった女性、若いと思っていたら中年の方でした。
今回のコラムで古都金沢の文化、歴史を語ろうと思っていたが、予定変更し新幹線パニックを紹介しました。考えてみれば、お互い家で化粧してくればこんな悲劇は起きなかったのに。教訓「化粧の奥には魔物が住んでいる」勉強になりました。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。
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