【ロサンゼルス2日】11月3日に行われるアメリカ中間選挙。日本人にとって気になるのが、「共和党が議会で勢力を拡大した場合、アメリカのビザはさらに取りにくくなるのか?」という点だ。
まず知っておきたいのは、共和党が勝ったからといって、翌日から日本人のビザが取れなくなるわけではないということ。
中間選挙では大統領は変わらず、主に連邦議会の構成が変わる。ビザの種類や発給枠など、法律そのものを変更するには議会での法案成立が必要だ。一方、審査方法や必要書類、セキュリティチェックなどは、政権や国務省、国土安全保障省などが議会の法改正なしに変更できる部分も多い。
そして2026年現在、移民・ビザ審査の厳格化は、選挙結果を待たずすでに進んでいる。
E-2ビザ|日本人経営者・駐在員への直接的な影響は?
日本人にとって身近なのが「E-2 Treaty Investor Visa」。日本は米国と条約を結んでいる国のため、日本国籍者は一定の条件を満たせば、米国への投資や事業経営を目的としてE-2を申請できる。
現在も「十分な投資を行っていること」「実際に営業している事業であること」「投資家本人が事業を運営・発展させること」などが主な条件となっている。日本がE-2対象国から外れるといった具体的な動きは、現時点では確認されていない。
ただし、注意したいのが“制度そのもの”ではなく“運用”だ。DHSは2026年9月、E-2を含む複数の就労系ビザについて、雇用や活動が終了した後に認められている最大60日間の猶予期間を廃止する規則案を公表した。まだ最終決定ではないものの、今後は「仕事を失ってから次の手続きをするまでの余裕」が小さくなる可能性がある。
つまりE-2の場合、現時点で大きな焦点となっているのは「ビザがなくなるか」ではなく、審査や滞在ルールがより厳格になるかという部分だ。
H-1Bビザ|もっとも大きな変化が進んでいるカテゴリー
IT、エンジニア、金融、研究職など専門職で働く外国人が利用するH-1Bは、今回取り上げる中でも特に政策変更が進んでいるビザだ。
トランプ政権は2025年から、国外にいる外国人を対象とした一定の新規H-1B申請について、雇用主に10万ドルの支払いを求める措置を導入。2026年9月には、この制限を2027年9月21日まで延長した。また、H-1Bの選考も高技能・高賃金の申請者を優先する仕組みに変更されている。
さらに議会でも、共和党議員からH-1Bの発給を一時停止して制度を厳格化する法案や、H-1Bを別の能力・技能重視の制度へ変更する提案が出ている。ただし、これらは提出された法案であり、現時点で成立した法律ではない。
共和党が上下両院で多数を確保した場合、こうしたH-1B改革案を議会で進めやすくなる可能性はある。ただし、どの案が実際に採用されるかは別問題だ。
日本企業が米国で日本人の専門職を採用する場合も、今後は「外国人を雇う必要性」「給与水準」「専門性」などがこれまで以上に重要になる可能性がある。
L-1ビザ|日本企業の「駐在員」にも審査強化の可能性
日本企業にとって特に重要なのがL-1だ。
L-1は、日本本社など海外の関連会社で勤務していた社員を米国法人へ転勤させる際に使われるビザで、経営者・管理職向けのL-1Aと、専門知識を持つ社員向けのL-1Bがある。原則として、申請前の3年間のうち少なくとも1年間、海外の関連企業で勤務していることなどが求められる。
L-1についても改革案は出ている。2025年には共和党のChuck Grassley上院議員らが「H-1B and L-1 Visa Reform Act」を提出し、両制度の不正利用防止や改革を提案している。
興味深いのは、この法案には民主党議員なども共同提案者として参加していること。つまり、H-1BやL-1の審査厳格化は必ずしも共和党だけのテーマではない。
さらに、先ほどの「60日間の猶予期間を廃止する規則案」にはL-1も含まれている。日本企業が社員をアメリカへ派遣する場合、ビザ取得だけでなく、駐在中の雇用関係や帰任・転職時のステータス管理もこれまで以上に重要になりそうだ。
F-1学生ビザ|留学後の「アメリカ就職」に注目
アメリカの大学や語学学校などへ留学する際に使われるF-1。
現在すでに、F-1を含む学生・交流訪問者のビザ申請ではオンライン上の情報確認が行われており、国務省は対象者にSNSプロフィールを「public」または「open」に設定するよう求めている。
さらに注目したいのが、卒業後にアメリカで働くために多くの留学生が利用する**OPT(Optional Practical Training)**だ。
2026年に共和党のTommy Tuberville上院議員が提出した移民改革法案には、議会が明確に法的根拠を設けない限りOPTを廃止する内容が含まれている。こちらも現在は成立しておらず、あくまで提案段階だ。
もし将来的にOPTが縮小・廃止されれば、「アメリカの大学を卒業→OPTで就職→H-1Bへ」という留学生の代表的なキャリアルートに大きな影響が出る。
そのためF-1で最も注目すべきなのは、留学そのものよりも卒業後にアメリカで働ける仕組みがどうなるかだ。
グリーンカード|家族ベースと雇用ベースで影響は大きく違う
永住権、いわゆるグリーンカードについては、さらに話が複雑になる。
共和党議員から提出されている「SMARTER Act」では、移民制度を技能・能力を重視したポイント制へ変更し、家族を通じた移民について対象を主に配偶者や未成年の子どもへ絞ることや、Diversity Visa Programを廃止する案が示されている。こちらも現時点では成立していない法案だ。
そのため、共和党主導で移民法の大規模改正が行われた場合、雇用・技能を重視する方向へ制度が変わる一方、家族を通じたグリーンカードの範囲が縮小する可能性は考えられる。
日本人に関しては、中国やインドのように雇用ベースのグリーンカードで国別に独立した長い待機列が設定されているわけではない。2026年11月のVisa Bulletinでは、日本は「All Chargeability Areas Except Those Listed」に含まれており、EB-1はCurrent、EB-2やEB-3には全体共通のカットオフ日が設定されている。
つまり、日本人にとっては「日本人だから不利になる」というより、米国全体の雇用ベース・家族ベース移民制度がどう変わるかが重要になる。
「共和党勝利=ビザが取れなくなる」ではない
今回の中間選挙を見るうえで重要なのは、「共和党が勝ったら外国人はアメリカに来られなくなる」という単純な構図ではない。
H-1Bではすでに大きな制度変更が進み、F-1ではSNSなどを含む審査が強化されている。一方、日本人が多く利用するE-2については、現時点で制度そのものを大幅に変更する具体的な動きは目立っていない。
またL-1の改革には超党派の議員が関わっており、移民・ビザ審査の厳格化をすべて「共和党対民主党」だけで説明することもできない。
中間選挙後、日本人が特に注目したいのは、H-1Bのさらなる改革、F-1卒業後のOPT、E-2・L-1の滞在ルール、そしてグリーンカード制度そのものを変更する法案が実際に議会を通過するのかという4点だ。
選挙結果そのものだけでなく、その後にどの移民法案が動き始めるのか。アメリカで働く、学ぶ、会社を経営する、そして永住を目指す日本人にとっても、今後2年間のワシントンの動きは見逃せない。