【ロサンゼルス6日】がんは、細胞の増殖に歯止めがきかなくなり、体の他の部分へと広がっていく疾患のことだ。こうした変異は一般に時間の経過とともに増えるため高齢者にがんが多いことは説明できる。しかし50才未満でのがん発症例が世界的に増加しているとする研究論文が9月5日、学術誌
「BMJ Oncology」に掲載されたことが話題をよんでいる。Forbesが報じた。
論文によると、50才未満のがん(早期発症がん)患者数は過去30年間で増加。2019年には世界全体で50才未満の182万人ががんと診断され、106万人が死亡したと報告されており、1990年からの増加率はそれぞれ79%と28%だった。発症増加がとくに顕著なのは気管がんと前立腺がんで、年間でそれぞれ2.28%と2.23%のペースで増加していると推定される。
早期発症がんで発症例と死亡例がもっとも多かったのは乳がんで、2019年の10万人あたりの症例は13.7人、死亡例は3.5人だった。非黒色腫皮膚がん(基底細胞がんと扁平上皮がんのこと)を除外すると、乳がんは世界でもっとも多いがんとなっている。死亡例の増加率がもっとも高いのは腎臓がんと卵巣がん。続いて、乳がん、気管がん、肺がん、胃がん、大腸がんとなっ
ている。
論文を執筆した研究チームによると、早期発症がんの増加は世界的な傾向ではあるが、2019年の罹患率は、北米、西欧、オーストラリア大陸の富裕国で高かった一方、死亡率は中央アジア、東欧、オセアニアでは不釣り合いに高かった。
研究チームは過去30年間の傾向を踏まえ、早期発症がんの新規症例と死亡例が2030年までにそれぞれ31%と21%増加すると予測している。40代の人がもっとも危険にさらされていると指摘した。
早期発症がんが増えている理由ははっきりしない。一般に、がん発症の要因はさまざまで、特定ウイルスへの感染、汚染物質などの環境要因、食生活、運動、薬物使用、アルコール摂取、喫煙などが関わっており、早期発症がんの増加をひとつの理由で説明することができないと研究チームは指摘している。