宇崎竜童と港のヨーコ

 行って来ました、宇崎竜童50周年記念公演『ダウン・タウン・ブギウギ・バンドを振り返る』コンサート。横浜関内ホールで行われた。やっぱりダウン・タウンの歌は横浜で聴かないと始まらない。先日「アサヒ芸能」の宇崎さんとの対談で久しぶりの復活と聞いていたのでとても楽しみにしていたのだが、こんなに感激する気持ちになったのは何年振りだろう。圧倒的に素晴らしかった。

 宇崎さんの弾き語りで幕が上がり、4~5曲歌い観客が盛り上がって来たところに盟友リードギター和田静男の登場で一気に盛り上がった…が、足元がおぼつかない。宇崎さんの「実は和田さんは1か月前に体調を崩し、この1週間でやっと回復。何とかステージに間に合いました。」の言葉に会場は割れんばかりの拍手。

 そして昔話で会場を温めてくれた。米軍キャンプで演奏をしていたデビュー前、会場の右側は白人、左側は黒人と分けられた客席の黒人からブルースのリクエスト、白人からはロックのリクエストがきた。しかしどっちも演奏出来ないダウン・タウン・ブギウギバンドが途方に暮れていると、客席の新兵さん達がステージに上がって来て演奏し出した話など、滅多に聞けないエピソード。

 ライブは涙だった。私の大好きな「知らず知らずのうちに」作詞・作曲 宇崎竜童

「知らず知らずのうちに君を好きになって 知らず知らずのうちに夢を見ていた  知らず知らずのうちに君の名前おぼえて 知らず知らずのうちに街を歩いていた  知らず知らずのうちに君の家を見つけて 知らず知らずのうちに電話帳を開いた  知らず知らずのうちに君と歩きはじめて 知らず知らずのうちに時も流れた  知らず知らずのうちに君と暮らしはじめて 知らず知らずのうちに離れられなくなった」

 宇崎竜童が切々と歌い、和田がまるで泣いている様にギターを鳴らす。70年代に青春を過ごした周りの観客も泣いている。将来が見えず、街を彷徨っていたあの頃を思い出していたのだろう。

 「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」作詞 阿木燿子 / 作曲 宇崎竜童 演奏を聞きながら考えている自分がいる。横浜、横須賀と移って行ったヨーコは今何処で暮らして居るのだろう。幸せになったのか。それとも一人で横浜に舞戻って来たのか。哀愁ある宇崎竜童の声が「50年前の曲のこの主人公は、今どんな人生を過ごしているのか。」と想いを馳せさせてくれる。病み上がりを押しての和田静男の魂のギター。本当に感動的なコンサートだった。有難いことに来年も開催されるという。

 来年のコンサートには「港のヨーコ」もスカジャン着て客席の隅で見ているのでは。帰り道、大さん橋の潮風が私の横を通り過ぎて行った。

 

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■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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