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　店内に入ると、角打ちバーで酒のテイスティングを楽しむお客さんたちの姿がみえる。「このお酒はフルーティですっきりとした飲み口だね」「この純米吟醸は米の旨味がしっかりと感じられるなぁ」など思い思いに日本酒を味わっている。並ぶ日本酒は１５０種類以上。ここはロサンゼルス郡唯一の日本酒専門店「Sake Secret」だ。おすすめの日本酒を尋ねると、日本人スタッフが出てくるかと思いきや…アメリカ人オーナーで唎酒師（ききさけし）のグレッグさんが流ちょうな日本語で日本酒を語ってくれた。

　２０２３年にロングビーチにこの店をオープンして１周年。「種類が五万とある日本酒の中から、『これだ！』と思う一本を探すのは本当に難しい。例えば、オンラインでお酒を買おうと商品の説明書きを読んでも何が魅力なのかピンと来ない人も多いと思います。日本酒はそのお酒が造られた土地や、どのように作られたのか、美味しい飲み方などを知って味わって納得して選びたいもの。奥深い日本酒体験をしていただける特別なお店を作りたかったんです」。これまでに日本で40県以上を旅しながら酒蔵を巡り、その土地で造られた酒に触れてきた。グレッグさんと日本酒の出会いは約20年ほど前に遡る。

　アリゾナで生まれ、一般のアメリカ人家庭で育った。「子供の頃は日本の文化にはまったく馴染みはありませんでした。高校の頃に黒澤映画『七人の侍』を観た時、侍が話す言葉の響きがかっこいいと感じて、日本を意識し始めました」。アリゾナ大学３年時には、１年間の交換留学で神戸の甲南大学で学んだ。「日本語クラスで学び、ホストファミリーや友達と過ごし、日本語漬けの生活。文化・歴史を勉強すればするほど日本への興味も深まった。二十歳の成人式を祝えたのも大きな思い出です」。カタコトだった日本語は、１年経つと流暢な会話ができるまでに進化した。

　大卒を卒業した２００６年、語学指導等を行うＪＥＴプログラムで再び日本へ。広島県呉市の島で２年間小中学校の教師を務め、３年目からは県庁の国際課に転職。合計５年間の広島生活でさらに日本を深堀りし、日本酒の魅力を発見した。「広島で毎年開催される『西条 酒まつり』。地元が誇る多種のお酒が試飲できるこの祭典に参加して、日本酒って種類によって違いがあるんだと初めて知った。コクが深いとか、米と麹でこんなにも味が変化するとか、どんどん日本酒探求に夢中になっていきました」

　そんなグレッグさんの日本酒愛が詰まった第二回目となる日本酒イベント「LB SAKE DAY」が10月５日にロングビーチで開催される。「西条の酒まつりを再現したい。屋外の会場で、オリジナルのおちょこで自由にお酒を試飲できる日本酒イベントです」。昨年は３００人が集まったこのイベント。今年はさらに盛り上がること間違いなしだ。

(9/5/2024)

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