【ロサンゼルスで暮らす人々】アーティストが力を発揮できる仕組みづくりを AI×エンタメの研究分野は今が正念場

LA暮らし

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光藤祐基 Yuki Mitsufuji
ニューヨーク大学スタインハート校客員教授/
インダストリアル・リサーチャー

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■インダストリアル・リサーチャーの光藤祐基さん

 「もともとはアーティストになりたいと思っていました。しかし途中から方向転換し、アーティストを支える側になりたいと思って、今があります」ニューヨーク大学スタインハート校で客員教授を務める光藤祐基さんは、AIとエンターテインメント分野の研究者。2024年からNYに来た。彼はどんな半生を送ってきたのだろう。
1978年千葉県柏市出身。母は何冊もの著書を持つ語学書作家で、父は工学系出身のビジネスマン。父の留学で小学4〜5年生の頃はボストンで過ごした。家では常に洋楽がかかっていたため、ソウルミュージックやR&Bは昔から耳に馴染んだ音楽だ。J-POP全盛期の90年代であってもマイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーに没頭していた。
 数学と英語が得意だったことから、高校卒業後は慶應義塾大学理工学部へ進学。音楽活動を本格的に始めたのもこの頃。慶応義塾大学ではボーカルを、立教大学ではベースを担当し、ボーカルトレーナーになるための学校に通ってみるなど音楽に身を投じた4年間だった。修士号を取得した2004年に就職。けれども情報工学の研究をさらに進めるべく、社会人との二足の草鞋を履きながら東京大学情報理工学研究科で博士号を取得。努力の塊の人だ。
 2011年、フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)に1年間留学。ここは研究者だけでなく音楽家も育てる場で、双方が関わりながら音楽の発展に向けてさまざまな研究が行われる場所だった。当時流行り始めていたのはイマーシブコンテンツ(没入型音楽)。イマーシブな体験を作り出すためには、ボーカルやピアノ、ドラム、ギターといった各音源に対し、音量や配置を個別に処理していくことが理想。しかし当時は今ほど音楽分離の精度が高くなかったため、非常に困難だった。音楽分離の技術をより良いものとして実現できれば、エンターテインメントに貢献できるのではないかと思ったことが今に繋がっている。
「生成AIから出てきた音楽が誰の音楽をもとにしているかわからないために、マネタイズ面でアーティストに還元される仕組みができていない。僕は音楽が好きなので、その仕事の尊さを理解していますし、今後もすばらしいアーティストが生まれてほしいと願っています。そういう人が今後も出てくるために、彼らに還元される仕組みの整備が必要です」2025年度、音楽分離技術の研究開発とその商品化・社会実装への貢献が評価されて、母校慶應義塾大学の矢上賞を見事受賞。「生成AIに関する課題はさまざまなクリエイティブの現場に影響を与えています。仕組みを適切に整えることができれば、魅了的なコンテンツは増えていき、多くの人が新しい映像や音楽を体験できるようになると思います」

■国際会議でレクチャー中
■家族との旅行写真

(10/3/2025)

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