分かったようで、よく分からないアメリカの『祝祭日』。 あなたはいくつ知っていますか?

アメリカ101 第90回

The 4th」という表記を目にして、すぐに何のことかが分かるのは、アメリカ生活が長い人でしょう。アメリカ初心者なら、「『4番目』って何のこと?」となるでしょう。そして「July th」ならば「あー、そうか」と、毎年74日に祝う「アメリカ独立記念日」のことだと分かります。そして今年の「The 4th」は、当日が日曜日のために翌5日が振替休日となるのですが、今回は、先週のコラムで取り上げた新設祝日「Juneteenth」に続いて、「分かったようで、よく分からないアメリカの祝祭日」がテーマです。  

 

 まず前回に「Juneteenth」が「11番目の連邦祝日」だと記しましたが、正確には12番目なのです。議会が承認、大統領が署名して設定となる連邦祝日とあれば毎年特定の日に祝うのですが、今年のように、合衆国憲法補正第20条の規定により4年に1回、1月行われる大統領就任式が連邦祝日となっています。しかし、ここからは問題が複雑になってくるのですが、連邦祝日は法規的には、文字通り「連邦政府職員(国家公務員)」と連邦議会の管轄下にある首都ワシントン(コロンビア特別区)公務員のみが対象です。慣習として州や郡、市といった地方行政区は、それを尊重して、同様に祝日とするという性質のもので、「大統領就任式祝日」はワシントン以外の行政区は完全に無視してることから、現実として同特別区公務員のみが対象です。このため連邦休日は通常11日というわけです。ちなみに国際的にみて、世界各国の祝日は総じて10日前後です。しかし日本では「国民の祝日」法(1948年施行)に基づき9祝日で発足したのですが、有給休暇の消化率が低いのも勘案して徐々に増加、現在では先進諸国では最多の16日となってます。 

 

 前述のような連邦祝日の性質上、州によってはさまざまな理由で「連邦祝日ボイコット」という事例が出てきます。「新年」「独立記念日」「感謝祭」などは「国民挙げて祝う」ということで異議はないのですが、議会が定めた連邦祝日も、その趣旨によっては、踏襲しないというケースがあります。たとえば、「キング牧師誕生日」ですが、公民権運動の指導者としての業績を称える祝日として1986年に施行されたものの、主として、人種偏見が根強く残る南部州の間で、当初は州として祝うのを回避してきたため、全米50州で採用となったのは実に14年後の2000年でした。 

 

 そして、近年異論が高まっているのが「コロンバス・デー」です。アメリカ大陸を発見したコロンブスの業績を祝う趣旨で、南北アメリカ各国で広範囲に祝日となっており、アメリカでは1971年から連邦祝日です。しかし先住民の間では、「『発見』とは何事か!」という反対論から、根強い祝日破棄の動きあります。それを反映して、先住民が多いアラスカやハワイ、ニューメキシコ、ネバダなど14州では州の祝日とはなっていません。このうちサウスダコタ州などは逆手をとって、この日を「Native American Day」(先住アメリカ人の日)としています。 

 

 さらに「クリスマス」があります。合衆国憲法には「連邦議会は宗教の護持に関する法律(中略)を制定してはならない」(補正第1条)との規定がありますが、連邦祝日としてキリスト教という特定の宗教に関わるキリスト誕生日を祝う連邦祝日を設け、休日とするのは「護持」に該当するのではないかという議論もあります。実際に裁判沙汰となり、オハイオ州南部地区連邦地裁は199912月に、「概して宗教色を欠いたものとなった」(largely secularized)と判断、「文化的な意味合い」(cultural significance)の祝日だとして違憲ではないとの結論を下しています。

 

(なお本誌611日号の87コラムで取り上げた「UFO」報告が625日に発表されましたが、140件余の「目撃情報」について「正体不明」としており、予想されていた通り、「UFO論争決着」には至りませんでした。) 

 


著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


 

 

 

 

 

 

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