『UFO』の報告書提出期限迫る。米国家情報長官室の気になる報告内容

アメリカ101 第87回

 

世間話、雑談というのがあります。英語ではIdle talkと言いますが、新聞記者、ジャーナリストの間で、なにかの拍子に時たま話題になるのが「世紀の大ニュース」です。その年の「十大ニュース」は年末になると欠かせない企画で、世界中の新聞社や通信社が競って恒例のリストを発表するのですが、そんな伝で、酒の席や取材待ちの時間潰しで「現時点で考えうる最大のニュースは何か?」をめぐり、それぞれ知恵を絞って無駄話をするという流れです。 

 半世紀にわたる記者生活の半分以上を海外で過ごした筆者のおぼろげな記憶では、そんなことが何回かあり、また雑誌の企画記事を目にすることもあって、さまざまな国籍のジャーナリストが、「オレはこう思う」と喧々諤々の議論になるのですが、そんな中で、「イエス・キリストが再降臨」と「宇宙人が地球に到来」が“2大ニュースだったと思います。いずれもプロのジャーナリストとしては、頭から否定的で懐疑的な姿勢で接するニュースであり、まず「ありえない」という前提で臨むだけに、「印刷に値するニュースはすべて」というニューヨーク・タイムズ紙のモットーのような高い関門を突破するのは至難なことだからです。 

 こんな前置きを記したのは、アメリカ政府内部で、それこそ国家としての存続の根幹に関わるような最大の機密情報を手にしているはずの国家情報長官室(Office of the Director of National Intelligence)が、いわゆるUFOUnidentified Flying Objects=未確認飛行物体)についての報告書を今月25日までに議会に提出することになっており、これを機会に、1950年代から相次いで目撃情報が寄せられてきた「空飛ぶ円盤」についてのアメリカ政府の正式見解が明らかになるのでないかという関心が高まっているからです。 

 宇宙人については、イギリスのHG・ウェルズやフランスのジュール・ベルヌといったSF小説の創始者が取り上げて以来、その運搬手段の「空飛ぶ円盤」としても知られてきたこの種の飛行物体を含めてさまざまな伝説を生んできました。そしてアメリカ政府が各種の極秘情報を入手、秘密に研究を進めており、そのために「エリア51」という軍用機密施設をネバダ州の砂漠地帯に設置しているのが公然の秘密となっているのは、UFOマニアでなくとも、よく知られています。敵性人として描かれる一連の「宇宙戦争」映画や、友好的な隣人扱いの「E.T.」などの映像を通じてもUFOはわれわれに親しい存在です。 

 そして、ここ20年ほどUFO目撃情報が増えており、飛行中の海軍パイロットという専門知識のある人物が撮影した映像が外部に流出するケースもあり、アメリカ政府に情報公開を求める声が高まってきたことから、議会の要請により政府の公的機関による初の包括的な報告書作成に至り、当初は6月1日に議会提出の予定でした。しかし同25日までに発表と延期になっていたところ、同3日にニューヨーク・タイムズが「米政府、飛行物体でのエイリアン(異星人)技術の証拠なしと結論、しかし同時にその可能性は否定せず」とのスクープを報道。政府高官によると、同報告では120件以上の「未確認空中現象」(Unidentified Aerial PhonomenaUAP)案件を分析した結果として、その大半は政府や軍の先端技術に基づくものではなく、政府による秘密プロジェクトではないと結論する一方、UAPの急激な方向転換や加速など異常な動きは説明困難としていて、玉虫色の内容とのこと。そして同紙は、報告には機密扱いの付帯文書があり、異星人によるUAPとの憶測をかき立てる可能性もあると指摘しており、UFOファンには舌足らずの内容となるようで、UFO論争はまだまだ続きそうです。 

 


著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


 

 

 

 

 

 

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