Vol.48 大麻の裏マーケット (2/7/2020)

Vol.48 大麻の裏マーケット

©Weekly LALALA

大麻の裏マーケットをブラックマーケットと呼ぶことがあります。初めに余談ですが、アメリカではブラックマーケットを「オフマーケット」と呼ぶようにしている動きが見られます。これはアメリカの歴史の中でアフリカ系アメリカ人(黒人)を「ブラック」と人種差別目的で使う傾向があったところから、ブラックという言葉を悪いイメージと繋げないためにも、「オフマーケット」と呼ぶようにしています。私も文中ではオフマーケットという言葉を使わせて頂きます。

大麻が合法である州には必ずオフマーケットと呼ばれる違法の裏マーケットが存在します。昨年アメリカ中を騒がせた、8人の死者が出た大麻のベープペンも、全てオフマーケットで購入された商品だったことにより、オフマーケットの存在が浮き彫りになりました。

●写真:最近ではディスペンサリーがきちんとライセンスのあるお店かどうか調べられるよう、大麻取締局がライセンスのQRコードの提示を義務付けました。

 

このコラムにも書いていますが、カリフォルニアのライセンスのある大麻ディスペンサリーで売られている商品は全て州と提携している検査機関により検査され、安全性が確認されています。全ての商品に識別番号がついており、その商品の検査結果をオンラインで見ることもできます。

検査の対象は大麻、ジョイント、ベープペン、エディブル、飲み物、ワックス、ボディクリームやバームなど、THCが0.3%以上含まれている商品は全てで、ライセンスがある大麻ディスペンサリーで商品を買い続けている限りは粗悪なものを買うという心配はなくなりました。安心して大麻製品を買うことができる大麻ディスペンサリーが存在しているのになぜオフマーケットは無くならないのでしょうか?

それは、34.5%という高い税金にあります。

 

高すぎる大麻税

カリフォルニアのメディカルマリファナカードを持っていれば税金は29.5%になりますが、基本的に大麻商品にかかる税金は34.5%で、その税率の内訳は以下の通りです。

City tax (市税) 9.5%

State Excise Tax (州税) 10%

Excise Tax (物品税) 15%

お店によっては一部の税金が値段に含まれていることもありますが、単純に$50の大麻商品を買うと$67.25になります。目が飛び出る税金の高さですよね。各州によって税率に違いはあるものの、大麻が合法な州では似たような大麻税が存在します。

カリフォルニアでは大麻が嗜好品になる2018年以前は、ディスペンサリーでは税金が一切かからずに今の2/3ほどの値段で大麻商品を購入することができたので、その時代を知っている人にとってはこの税金はバカらしい以外の何物でもありません。

例えば2018年以前はTHC100mgのグミは$10で購入することができました。現在はTHC100mgのエディブルは平均$20+taxなので、$27ほどになります。$10で購入できていたものが2.7倍の$27になっています。

経済的に余裕があり34.5%の税金も痛くない、という人ももちろん存在しますが、大麻を薬として日常的に使用し生活している低所得者にとっては大きな打撃です。ロサンゼルスは貧困の差が大きく、ビバリーヒルズやハリウッドで見かけるセレブリティな人もいれば、最低賃金で働いている人だってたくさんいます。また、持病で仕事をすることができず収入を上げることができない人だっています。そんな人たちは単純に、新しい法律で治められた税率で大麻製品を買うことができないのです。通常のディスペンサリーで購入する大麻製品は、カリフォルニアのメディカルカードがあったとしても保険でカバーされないので完全に自己負担になります。低所得で、生きるのにいっぱいいっぱいになっている人たちにとっては34.5%の税金を払うなど、オプションとして選択肢がないのです。

 

そういった人は地元の人しか知り得ない、看板も出していないような違法ショップや、大麻を大規模で栽培している知人(これもまた違法ではあります)から大麻を購入することが多いようです。安全性どうこうよりも、「2018年以前は検査なんかしていなかったのだから今さら・・・」と考えている人がいるのも事実のようです。

さらにアメリカらしい面白い動きだなと思ったのは、大麻インフルエンサーによる一般人も参加可能な大麻系のイベントの開催です。

12月に開催されたイベント「Secret Sesh」。(次回開催は6/6)

これはチケットを買わずにオフィシャルサイトでRSVP(予約)だけで参加できる大麻系のイベントなのですが、大手ブランドを何十社と集めて各ブランド自社の商品を普段ディスペンサリーで買える値段の2/3ほどで販売し、税金は加算されません。

これは私も詳しくはわからないのですが、利益目的ではなく招待者オンリーの「プライベートパーティ」として開催しているので、そういったことが可能なんだと思います。

大麻インフルエンサーが作り出した、高すぎる税率と厳しすぎる法律からの抜け道イベント、というところでしょうか。彼らは法を犯したいわけではなく、2018年以前のように、一般の人が大麻製品を納得の値段で購入できる場を設けたい、というコンセプトがあるんだと思います。

転んでもタダでは起きない、間違っていると思うことに対してはきちんと考えを持って対応し行動する。そういったアメリカの強い精神が私は好きです。

長年大麻を育てている人たちの中には、新しい法律には賛同せず、アウトローに大麻を育ててオフマーケットで生きていく覚悟をしている人もたくさん存在するとよく聞きます。確かに法律違反なのだけれど、その裏には理由がある。

 

華やかに見えるカリフォルニアの大麻業界ですが、その裏に解決するのが難しい深い闇があるのも大きな事実であります。

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■アドバイザー
Blue Dreamz
茨城県出身、2010年にファッションバイヤーになるのを夢見て、1年間の語学留学でロサンゼルスに渡米。その後メルローズ沿いの洋服屋に販売員/マネージャーとして勤務、独自のセンスを生かし、自身のセレクトシューズブランドADORE Los Angelesを立ち上げ順調に売り上げを伸ばすが、兄の死をきっかけに目的を見失う。人間活動に専念しようと生きていく中でカリフォルニアの医療用大麻というものを知り、日本との大麻に対する価値観の違いに衝撃を受け、自らリサーチを始める。
「日本人にとって大麻はドラッグのイメージがあります。小さい頃から大麻は人生をダメにするドラッグだと教えられる中、世界各国では医療用、そして嗜好用大麻が続々と解禁になっているのはギャップがありすぎるなと思いませんか?大麻にはメリットがあります。大麻によって精神的にも肉体的にも助けられた人をたくさん見ました。大麻先進国の事情をお届けし、少しでも偏見がなくなればと思います」

インスタグラム @bluedreamz

 

 

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