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岡本恵子
Keiko Okamoto
フルート奏者
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メキシコの民俗音楽マリアッチの衣装に身を包んだ女性たちが華やかにステージ上に勢ぞろい。トランペットやギター、バイオリンなどを奏でながら、力強く情熱的な歌声を響かせる。グラミー賞受賞マリアッチバンド『マリアッチ・ディーバス(Mariachi Divas)』は今年で結成から25周年。女性のみで構成されるこのバンドのフルートを担当するのが、岡本恵子さん。このバンドとの出会いは約20年前。「メンバーから誘われてレコーディングに参加したのが始まり。バンドマスターが気に入ってくれてたびたび彼女たちのパフォーマンスに参加するようになりました。それから間もなく、ディズニーランドでのステージに1日6ステージ立つようになり、それまでマリアッチに馴染みがなかった私にとって、そこでの経験はその後の自分の演奏家としての方向性を見出した大きな転機となりました」。所属しているもう一つのマリアッチバンド『グルーポ・ベヤ』では今月、全米6か所を回るツアーに参加のほか、先日はヒップホップアーティストの新曲レコーディングでフルート演奏の依頼があり急きょスタジオに出向くなど、音楽ジャンルを問わず多岐にわたる音楽活動を展開する。
北海道で生まれ、子供の頃は奈良や岡山で育った。「母が小学校の先生で学校でピアノを弾いていたのもあり、五人兄妹の長女だった私は6歳の頃、妹たちとピアノを習い始めました。大学は日本大学芸術学部に進んだのですが、部活でミュージカル研究会に入ったところ、はまってしまいダンスやパフォーマンスをやり過ぎて腰を悪くしてしまったんです。それで自分にはやっぱり音楽しかない、クラシックを勉強しに留学したいけどお金もない…稼ぐ道を探していたところ、知人に教えてもらった陸上自衛隊の音楽隊のフルートのオーディションを受けて合格しました」
23歳で自衛隊に入隊。まず最初は、銃の組み立て、射撃、座学や防衛の勉強、怪我人の手当てや匍匐前進での搬送など自衛隊訓練終了後に音楽隊に配属。「初めに東部方面音楽隊、のちに中央音楽隊に転属しました。地域に密着したコンサートや、大相撲初場所や大井競馬場の優勝パレードなど様々な催しでの演奏を行いました」
音楽隊時代、岡本さんに大きな衝撃を与えたのが友人からもらったカセットテープで聴いた「ラテンジャズ」。ジャズやラテンサウンドへの目覚めだ。除隊後は新たな音楽性を開拓すべく30歳でバークリー音楽院のパフォーマンス学科で学んだ。「クラシックから殻を破り、どんどん音楽が広がっていきました。その場のフィーリングでメロディを自由に奏でたり、飛び入りでジャムセッションを楽しんだり。ジャズとの出会いがあったからこそ、サルサやマリアッチの世界にも飛び込んでいくことができた。ラテンバンドもフィーリングがすべて。譜面なんて渡されたことがありませんから」。
(10/8/2024)
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