知っていますか? アリステア・クック 「アメリカ理解」を深めたジャーナリスト

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アメリカ101 第214回

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今年も、残る日々が両手で数えられるほどの歳え末となりました。このコラムでは、「アメリカを理解する」という大きな狙いを意識しながら、さまざまなアメリカに纏わるさまざまなニュース、話題を取り上げてきました。そして今回は、新しい年という節目を意識して、ひとつの区切りということで、「アメリカ理解」を深めるのに貢献してきた先駆者のひとりであり、筆者自身も尊敬してきたアリステア・クック(Alistair Cooke(1908−2004、享年95歳)というイギリス出身のジャーナリストについてです。  

外国人として世界最初の近代民主主義国家であるアメリカを分析した人物としては、「アメリカのデモクラシー」(1835/40年刊)で知られる19世紀半ばに活躍したフランスの政治思想家アレㇰシス・ド・トクビル(Alexis de Tocqueville)がいますが、マスメディア時代の落とし子としてラジオやテレビを通じて長年「アメリカ」という“巨像”に取り組んできたのがクックなのです。  

読者の皆さんの中には、アメリカ生活が長く、公共放送PBSテレビを通じて毎週日曜日のゴールデンアワーに放映されるイギリスの連続ドラマ・シリーズ番組「Masterpiece Theatre」の熱心な視聴者であった人々にとっては、長年にわたり、その前後に番組の紹介役を務めたクックは馴染みのある人物でしょう。  

そんなクックを没後20年という現時点で取り上げるのには理由があります。それは最近筆者がハマっているネット上の動画送信サービスであるYouTube上で、クックの現役時代の長寿ラジオ放送番組「Letter from America」の過去の番組に遭遇、懐かしく聞き入ったからです。  

クックはイギリスの:ケンブリッジ大学を卒業後、奨学金を得てエール大学、ハーバード大学で学んだあと、BBC放送の特派員として渡米、1941年にアメリカ国籍を取得。1946年から、ニューヨーク駐在のBBC記者・コメンテーターとして活躍。特に政治・経済から文化、社会といったアメリカ事情全般を取り上げる毎週15分間の「Letter from America」と題する番組を60年近く担当し、イギリス国内だけでなく、BBCワールド・サービスを通じて世界中に「アメリカ」を伝えてきました。  

筆者は、大学を出て通信社に入社、外国ニュースを扱う外信部に配属となって以来、短波放送を通じてBBCワールド・サービスに耳を傾ける機会が増え、クックの番組を聴取するのが習わしとなりました。  最近のYouTubeサービスの充実ぶりは目を見張るものがあります。今月12日12日は、日本が世界に誇る巨匠/名監督小津安二郎の生誕120周年記念日です。それに伴い、日本国内だけでなく、今年に入ってから世界各地でさまざまな行事が開催されたのですが、それに合わせてYouTubeでは、代表作の「東京物語」(1953年)や「浮草」(1959年)、遺作となった「秋刀魚の味」(1962年)まで、実に26作品が高質画面でアップされており、アクセス可能となっています。著作権にからむ課題をいかにクリアしたのか分かりませんが、ネット視聴者にとっては喜ばしい次第です。そんなわけで、これからはYouTubeのチェックが、欠かせない日課となりそうです。

  

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(12/19/2023)

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