全長3.6キロ、2分毎に運行 LAXの「自動旅客輸送システム」

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アメリカ101 第171回

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ロサンゼルスのみならず、南カリフォルニアの空の表玄関、ロサンゼルス国際空港(LAX)が一大改修工事の真っ只中です。今年に入って、2017年に始まった一連のプロジェクトが予定の半分を消化して、遅延が当たり前のこの種の公共事業では珍しく、予定通りの2030年までの完成を目指して工事が順調に進んでいます。工事の目玉である「Automated People Mover」と呼ばれる、各ターミナル間や、離れた駐車場からの利用客の移動を目的とした「自動旅客輸送システム」は、来年後半には運用開始となる予定です。  

最近旅行や歓送迎で空港を訪れた方は、文字通り工事現場に乗り入れた感じを抱かれるのではないでしょうか。各ターミナルを結ぶU字型の上下2段の高架道路の上にそびえるように建設が進む、この輸送システムを始めとするさまざまな工事は、2017年から総工費150億ドルで行われている一連の新築・修改築事業です。デルタ航空が使用する第3ターミナルの拡張工事は、1960年代の建物の改修で、すでに昨年末に完成しています。  

そして何よりも注意を惹かれるのは「Automated People Mover」。各ターミナル間や、離れた駐車場からの利用客を運ぶシステムで、周回ルートは全長3.6キロ。運行時速は平均21キロで、最高スピードは75キロとのこと。現在の上下2階のターミナル周回道路の混雑を解消する目玉となるもので、「24時間空港」であるLAXだけに24時間年中無休で、午前9時から午後11時までは2分間隔運用です。  

ターミナル内の駅は①第1・第7、第8ターミナル用 ②第2・第5、第6ターミナル用 ③第3・第4、B(ブラッドリー)ターミナル用の3駅です。車両は全部で44両、各1両は定員50人プラス荷物スペースで、座席は12人分、4両編成となっています。今年夏から1年半にわたるテスト走行を開始し、2026年のサッカーのワールドカップ、そして2028年の夏季五輪といったビッグイベントで押し寄せる内外からのの多数の旅行客をさばくのに大活躍するはずです。そして、それまでには、ダウンタウンと空港を結ぶメトロ鉄道の便も整備される見通しです。  

これらの工事は、コロナ禍に突入してからも、感染予防対策を採用しながら本格的に進められているわけですが、感染拡大で旅行客が大幅に減少した結果、空港内での交通渋滞が解消するといった“順風”に恵まれて、予想を上回るペースで進捗しているとのこと。  

空港の年間利用客は、これまでのピークは2019年の8806万人でした。コロナ禍以前のことで、アメリカではアトランタ空港に次いでナンバー2、世界では3位でした。その後2020年は2880万人に激減、20121年には4800万人まで回復しました。一方で貨物輸送はコロナ禍にも関わらず右肩上がりに増え続けています。  

LAXの正式名称はLos Angels World Airportで、ロサンゼルス市役所の組織に属しています。IATA(国際航空運送協会)の略称はLAX、ICAO(国際民間航空機関)の略称はKLAXです。  

そして、どうしてLAXとなったかですが、アメリカでは空港の名称は1930年までは、基本的にはその土地の気象台の名前を使っていたので、Los AngelsはLA空港と名付けられたわけです。元来は太平洋に面した一帯は不動産業者であるウィリアム・マインズという人物の名前から「Mines Field」空港となっていたものが、1930年にロサンゼルス市空港(Los Angeles Municipal Airport)と改称。1937年にロサンゼルス市が買収してロサンゼルス空港(Los Angeles Airport=LA)となります。さらにアメリカ国内各地で空港が増えた結果、略称は頭文字2つでは足りなくなったため3つとする必要が生じて、「X」を加えたということです。別に大した理由はなく、文字通り、手近な「X」を使ったという程度の話のようです。.

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(1/31/2023)

 

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