還付金はいつ支給? カリフォルニア州の大幅財政黒字による余剰金

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アメリカ101 第138回

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 「貰えるものなら、できるだけ早く貰いたいものだ」というのが人間の心理ではないでしょうか。5月6日号(第133回)の当コラムで触れた、カリフォルニア州での予想外の大幅財政黒字による“余剰金”の使途についてです。州政府と州議会の調整が遅れていて、最終的な方針が確定に至っていません。今月15日までに議会側が予算案を成立させる必要があり、1日に草案を発表したのですが、目玉となる還付金では、一人当たり200ドルの現金(小切手)支給を明記しているものの、ギャビン・ニューサム州知事が推進するカーオーナーへの現金400ドル給付は含まれていません。しかし、何らかの形での数百ドル単位の還付金支給は間違いないようです。

 州議会のトニー・アトキンス議長代行とアンソニー・リンドン議長が発表した予算案では、所得が125000ドル以下の住民一人当たり200ドルの現金支給を実施するとしています。議会側が当初から固執してきたアイディアです。しかしカー・オーナーへの400ドルの給付は含まれていません。知事側は、車両登録記録のあるDMV(州政府自動車局)を通じた給付が早急に実施可能であり、州政府税務当局の納税記録を通じた受給有資格者確定よりも弱者救済となるとしています。

 カリフォルニア州での大幅な財政黒字は、個人所得税による税収に大きく依存する特有な州財政体系に帰来するものです。「カリフォルニア州の個人所得税が高い」と言われていますが、それは、州内の富裕層への高率な税率が課せられていることから生じる印象です。具体的には、州の個人所得税による税収の半分が、全所得税納税者のトップ1%が占めているという事実が物語っています。

 富裕層の収入の多くは株式や債券などのマーケット取引によるもので、キャピタルゲイン(資本利得)といわれるものです。概して株式売買で、元値を上回った株を売却した生まれる利益で「株式譲渡益」ともいわれます。好景気が続き株価が値上がりした場合に、株式を売却することで大幅なキャピタルゲインを手にすることができるわけです。

 今回のカリフォルニア州財政の大幅黒字は、ここ数年の景気好調で株価が急上昇が背景にあります。値上がりした株式を売却する富裕層が増えればキャピタルゲインが膨らむ結果、それによる納税規模も膨らむということで、予想外の規模で州財政が潤った結果です。

 前述のコラムでは、州議会予算分析室(LAO)の試算として、今年1月の時点では黒字規模が最大200億ドルだったと記しました。その後4月には680億ドルとの予想となったのですが、黒字幅の「爆発的増加」(ネットサイトの「ポリティコ」)で、5月末時点の最新分析ではほぼ1000憶ドルにも達する見通しとなっています。

 ところが、このところ株式市場の反落状況が顕著となってきたため、大幅黒字に伴うばらまき予算への懸念が浮上してきています。ウクライナ情勢を受けた様々な経済面でのマイナス、そしてインフレ高進といった要因が顕在化されてきたためです。リセッション(景気後退)も視野に入ってきたとの見方も出ており、カリフォルニア州財政にとっても厳しい局面が予想されます。

 しかしニューサム知事はインフレ対策として総額180億ドルを約束しており、数百ドル規模の還付金支給は時間の問題として、「楽しみ待ち」ということでしょう。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(6/7/2022)

 

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