アメリカでの急患入院・治療・退院

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アメリカ101 第225回

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コラムの休載が続きましたが、その理由である、冠動脈のバイパス手術を受けて、「脛にキズ持つ」ならぬ「胸にキズ持つ」という、“前科者”ならぬ“前患者”となった、あと数日で84歳となる後期高齢者の筆者が経験した一連の入院経緯を記して、通例のテーマであるアメリカの政治や社会の話題ではなく、「アメリカでの急患入院・治療・退院」という、誰の身にも起こりうる「病人」としての一部始終を記すことで、読者の皆さんの参考になればと思います。
 
 
「これはちょっと変だ」と自覚したのは、3月1日のこと。右胸上部の筋肉に異常を感じました。ここ数十年、年間を通じて週3回の水泳を欠かさず、文字通り風邪一つひかず、寝込むようなこともなかった“健康優良児”だったことから、単なる筋肉痛と思い込ませるようにしたものの、胸を横切るような違和感が続き、「ヤバイかも」との不安が頭をもたげてきました。
 
 
このため、風邪やちょっとした発熱などで会員として利用してきたアメリカ最大手HMO(医療保健組織)であるKaiser Permanente(カイザー)傘下の最寄りのUrgent Care(アポ不要の診察所)に足を運びました。そして、医師の問診やレントゲン撮影、血液採取といった一連の診察を受けて帰宅してホッとしたものの、夕方になって、突然救急車がサイレンを鳴らしながらサウスベイ・ガーデナ市内の自宅前に横付けとなる“大騒ぎ”。
 
 
血液検査で心臓マヒを予告するような数値が出たということで、文字通り有無を言わさず着の身着のまま、取り敢えず近くの総合病院であるサウスベイUCLA病院に搬送されて、一旦診断を受けたのも束の間、ロサンゼルス平野(basin)南端のサウスベイから、同最北に位置するサンセットブルバード沿いカイザー傘下の心筋梗塞専門病院に移送となったのが午後8時過ぎ。結局この病院で14日の退院まで、2週間を過ごすことになります。
 
 
病室は個室と2人部屋があり、入院中は大部分を個室で過ごすことになりました。室内にトイレ・シャワー室が完備しており、内庭を見下ろす窓があり、閉塞感はありませんでした。
 
 
日本語でさえ最小限の医療知識しかない患者にとっては、英語での症状や病名などを耳にしても、生半可な理解にとどまり、結局最後まで日本語の「病名」は不明でしたが、要するに冠動脈内にゴミが溜まって、血流がスムーズにいかず、放置しておくと心臓停止の恐れがあるという程度の理解で、すべては担当医師や看護師に“お任せ”ということになりました。
 
 
血液の流れが停滞している部分の動脈をバイパスする手術のため、それに必要な組織は左足の一部を切り取ったということで、手術の傷口が胸と左足の2カ所です。
 
 
もちろん手術そのものは全身麻酔のため、痛みはゼロでしたが、傷口の完全回復には月単位の期間が必要とのことで、半年程度を要するのを覚悟せねばならないようです。
 
 
そして気になる一連の費用負担ですが、手術からほぼ2週間後に、copay(自己負担)として250ドルの請求がありました。バイパス手術全体の費用は数万ドルから数十万ドルといったところのようですが、筆者は連邦政府のメディケアとカイザー健康保険に加入しており、目が飛び出るほどの負担になることはないと考えており、取り敢えず健康体への回復が軌道に乗っていることを実感できる日々に感謝しています。

 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(3/27/2024)

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