カリフォルニア、ニューヨーク、イリノイ 民主党の強力な地盤の各州で人口減少

.

.

アメリカ101 第215回

.

このところ、カリフォルニア、ニューヨーク、イリノイといった多くの人口を抱える民主党の強力な地盤である各州で人口減少が続いており、今後のアメリカの政治地図に大きな影響を及ぼす傾向が続いているのが明らかになっています。  

アメリカでは、10年毎に実施される国勢調査を受けて、変化する民意を反映する目的で人口の増減に応じて、それぞれの州で選出する連邦下院議員の定員を調整する政治システムとなっています。そして、昨年12月下旬に発表となった国勢調査局(Census Bureau)の最新の人口動態データでは、総じて民主党が優位にある北東部、中西部、そしてカリフォルニアの諸州での人口減少と、共和党支持者が多い南部および西部の山岳部の諸州での人口増加が顕著です。  

最新データによると、アメリカの総人口は2022年7月から2023年7月までの1年間で160万人増加、合計3億3491万4895人となっています。増加率は0・5%で、新型ウイルス・パンデミック下の2021年の0・2%増、2022年の0・4%増を上回っているものの、引き続き歴史的な低水準にあります。国勢調査局の専門家は、出生率が低下したものの、死亡率がほぼ9%減少した結果、わずかながら上向いたとしています。  

人口増が目立ったのは、パンデミックを通じて人口が増えた南部諸州で、140万人増を記録、増加分の87%を占めています。州別ではトップがテキサス州47万3000人増、次いでフロリダ州が36万5000人増で、それぞれ1・7%、1・6%の増加率です。その背景としては、テキサス州の場合は、往年のカリフォルニア州の魅力だったハイテク企業の台頭による求人増で、若い年齢層の流入が目立ち、フロリダ州やサウスカロライナ州は引退老齢者のメッカであるためのようです。  

全米50州のうち人口増を記録したのは42州で、パンデミック入りの2021年の34州、2022年の34州と比べて、増加した州の数が加速しています。一方人口減となったのは8州で、最大の減少はニューヨーク州の10万1984人。次いでカリフォルニアの7万5423人、シカゴを抱えるイリノイ州が3万2826人などとなっています。  

人口の増減は、州選出の下院議員数に反映します。今回の人口データの趨勢が2030年の次回の国勢調査まで続くとすると、議員数減少による政治力低下を余儀なくされるのはカリフォルニアとニューヨークの両州です。アメリカ最大の人口を有するカリフォルニアの場合、現在は下院議員52人を選出していますが、今後とも人口減が続く場合には、4議席を失う見通しです。ニューヨークも前回2020年の国勢調査入り人口が50万人も減少しており、現在の26議席から3議席を失い、23議席となるとみられています。  

両州とも伝統的に民主党が優位にある選挙区が多く、また現時点で州知事ポストを民主党が占めるという同党が優位にあるイリノイ、ミネソタ、オレゴン、ペンシルベニア、ロードアイランドでも下院議員1議席を失う可能性があり、人口減少は民主党にとって大きな打撃です。それに反してプラスとなるのは共和党です。州知事が共和党出身であるアリゾナ、フロリダ、ジョージア、アイダホ、ノースカロライナ、テネシー、ユタの各州では、少なくとも1議席増(テキサス州4議席増、フロリダ州3議席増)となる見通しで、人口動態は間違いなく今後の州レベルでの共和党躍進につながるとみられます。

 

アメリカ101をもっと読む

ホームに戻る

.


著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(1/3/2024)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。