アメリカ各地で続く トランプ資格訴訟

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アメリカ101 第207回

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来年のアメリカ大統領選挙に向けてホワイトハウスへの返り咲きを狙うドナルド・トランプが、合衆国憲法の規定では大統領となる資格を有しないと主張する市民団体が起こした訴訟に関する聴聞会が10月30日から5日間の予定で、コロラド州デンバーの地方裁判所で始まりました。

同様の訴訟の動きがミネソタ、ニューハンプシャー、ミシガンなどの各州でもあり、トランプにとっては、まずこれらの訴訟をクリアするのが前提となるわけで、大統領選挙での“関門”として注目を浴びています。

合衆国憲法修正第14条第3節では、過去に公職就任にあたり憲法を支持すると宣誓しながら、その後合衆国に対する暴動や反乱に加わった者は、連邦政府のいかなる公職や官職にもつくことができないと記されています。この修正条項は、南北戦争で“反乱軍”であった南部諸州の政治家や軍人、公務員の“返り咲き”を封じる狙いで採用されたものです。具体的には、南軍側のジェファソン・デービス大統領、アレクサンダー・スティーブンス副大統領の存在が念頭にあったようです。

そしてトランプは、2021年1月の連邦議会襲撃事件で暴徒を扇動したとされています。事実、連邦下院は、この際のトランプの行動を理由に、弾劾訴追したのですが、上院では「無罪」評決となっています。

これまでに、この条項により大統領選出馬で失格者となったケースはなく、それだけに、その適用の運用にはさまざまな疑問点があるとの指摘がなされてきました。

今回のデンバーでの聴聞会は、「首都ワシントンでの責任と倫理を求める市民連合」(Citizenns for Responnsibility and Ethics in Washington=CREW)と称する市民団体が、トランプに対して同条項を適用して、トランプが大統領になる資格を欠いているとの認定を求めて提起したもの。同様の聴聞会は11月2日にミネソタ州セントポールでも開催されました。

聴聞会で証言したノア・ブックバインダーCREW代表は、訴訟を提起した理由について、「われわれの共和国を現在、そして未来にわたり擁護するのに必要であるからだ」と証言、トランプが議会襲撃を扇動し、支援したと指摘。そして証人として、現場に居た警官2人とエリック・スオールウェル下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)が出席。警官のひとりは、「アメリカに対するテロ攻撃であり、平和的な権力譲渡を妨害だ」と言明し、同議員は「戦場の様相だった」と語っていました。

今回の大統領選挙では、民主党側では現職のジョー・バイデン大統領が党内からの有力な対立候補がいないことから、再指名が確実視されています。一方野党共和党側では、トランプ以外にも、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事、ロン・デサンティス現フロリダ州知事、ニッキー・ヘイリー元サウスカロライナ州知事、ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)といった有力政治家が名乗りをあげているものの、トランプが指名獲得に最短距離にあるとの状況に変化はありません。

トランプに修正14条を適用すべきかの是非については、9月末時点でのABCニュース/ワシントン・ポスト世論調査では、「適用すべし」が44%、「適用は無用」が50%がとなっており、トランプにとって大きな障害とはなっていないようです。

今後数か月にわたり、この「トランプ資格訴訟」が各地で続く見通しで、最終的には連邦最高裁で争われる可能性が高いとみられており、その推移には目を離せません。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(10/31/2023)

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