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関 勇ニ郎
Yujiro Seki
映画監督
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ロサンゼルスを拠点に活動する映画監督、関勇ニ郎さん制作のドキュメンタリー映画『Carvingthe Divine(カービン・ザ・ディバイン)』が海外の国際映画賞を多数受賞するなど注目を集めている。関監督自身が、仏像彫刻の職人「仏師(ぶっし)」の現場に足を運び、その日々を6年にわたり撮り続けた同作品は、制作開始から編集、完成に至るまでに11年を要した。
「『仏像を彫る』それは静寂でゆっくりと流れる時の中での単調な作業。撮影を始めた当初は、カメラで撮っている僕の存在がその場所で意識されていましたが、だんだん自分がその空気に溶けこみ、ある時から仏像を彫っている職人さんたちが僕のことを気にしなくなりました。そうなった時からその空間でいろんなものがみえてきた。日々、何かしらの発見があるんですよね」
同作品が海外から注目されるのはなぜなのだろうか。「日本という国には、外にみせる顔と内にみせる顔があります。表面的な部分はみせても、中で本当は何が起きているのかは、なかなか外の人には見せない。この作品では、そこにある日本人の真髄を映し出すことができたと思います。外国の人にとって本当の日本を垣間見られる新鮮さのある作品に完成したのではないでしょうか。それと、外国の人は、たとえ仏教徒でなくとも、スピリチュアルなマインドにコネクトできる方が多く、仏様が尊いということを理解している、そう感じました」
それにしても、「仏像」「仏師」「仏の道」とは、捉えどころがなく、計り知れない壮大なテーマだ。このドキュメンタリー作品を撮りたいと思った動機は何なのか。「父は仏壇製造会社の社長で、自分自身は幼い頃から仏具に囲まれて育ちました。お寺の和尚さんたちとも関わりが深かった」。高校生になると演劇や映画作りに興味を持つようになり、映画制作を学ぶために渡米。UCバークレーの映像学科、UCLAでシネマトグラフィーを修了後、LAのデザイン会社に就職し映像制作を担当。「アメリカ生活で様々な人種の人と交流する中で、自分が日本人であることを常に意識するようになり、日本人として人生をかけて他の誰にも撮れないユニークな映像作品を撮りたいと思うようになった。自分にしかない特別なものをと考えた時に、幼少時代に仏具や仏像が近い存在だったことに結びついたんです。この作品は、日本に1400年継承され続けてきた仏師の仕事が生み出す伝統芸術、仏像、宗教、哲学・・・人類のテーマを考えながら制作しました」
ナレーションを最小限に抑えているため、言葉が作品を観ている人の心を何かに誘導することもない。この作品を目にする一人ひとりが、自分自身と向き合ったり、何かを発見したり、自分に何かを問いかけたり。そんなきっかけになれれば、と関監督は話している。
(4/4/2023)
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