カリフォルニアの人口減 人口増の勢いのある州は?

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アメリカ101 第167回

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本当に数えた結果の偶然なものなのか、それとも、こんな数字にしたら面白いし、関心も高まるだろうから数合わせをしたのかといった推測を生みかねないほどのものでしょうか。「333・3」というのが、その数字です。英語の表記では「333・3 million」で、アメリカの財政年度の年度末である2022年6月30日現在のアメリカ合衆国の総人口(3億3330万人)です。日本を先頭に世界の工業先進諸国での人口が軒並み減少傾向を続けている中で、わずか0・4%とはいえ増加を記録したのは、アメリカの“国力”のほどを示すものでしょう。

国勢局(Census Bureau)が1月21日に発表したもので、2021年が新型コロナウイルス流行の直撃で、アメリカの歴史上最低の0・1%という増加率にとどまったのからすると、微々増ということですが、州別では、大都市を抱えるニューヨーク、イリノイ(シカゴ)、それに南部のルイジアナの各州が0・8%から0・9%の減少です。一方増加した州もあります。フロリダ(1・9%)、アイダホ(1・8%)、サウスカロライナ(1・7%)、テキサス(1・6%)などの南部諸州が増加幅が大きかったところです。カリフォルニア州は、19世紀半ばに州に昇格して以来一貫して人口増を続けてきたものの、新型コロナパンデミックで人口増加に足止めがかかり、昨年はマイナス0・3%で、2年連続の減少となりました。

また予防管理センター(CDC)が同月22日に発表した最新統計では、2021年のアメリカ人の平均寿命は76・4歳でした。パンデミック以前の2019年が78・8歳ですから、2・4歳も縮まったことになります。これは1996年以来の最低です。もちろん、その背景にはパンデミックが大きな影を落としているのですが、それに加えて、医療用麻薬オピオイドの薬物過剰摂取という年来の大きな薬物乱用という死因が指摘されています。そして死者数が出生数を上回るという「人口の自然減少」を記録しのたが24州にものぼっているのが注目されています。アメリカでは年間で自然減少を記録する州が5州でもあれば異常とされていますが、その5倍もの数の州で記録されたは異例のことです。国連による国際的な人口動態傾向によると、アメリカは引き続き21世紀末まで増加を続けるのに対して、日本、ドイツ、イタリア、ギリシャ、ポルトガルや東ヨーロッパでは人口減少が始まっています。そして世界最大の人口を抱える中国では、2021年に0・03%増で14億人となってピークに達し、その後減少に向かうようです。

アメリカの出生率は2007年に歴史的なピークに達したあと、20%も下降を続けており、人口増加傾向を維持するには移民の受け入れを増やすしかありません。昨年のアメリカでの人口増加に移民が貢献する比率は、10年前の40%から、2021年には約80%に達しています。移民の増加は直近の永住権ビザ発給増にみることができます。パンデミックの影響で同ビザの発給件数が大幅に減少したのですが、最近は急速に回復しており、昨年9月30日までの1年間では100万件弱を記録、パンデミック以前の長期的な平均水準である110万人に戻っています。

前述の通り、最大の人口増を記録しているのはフロリダ州で、44万4000人ですが、これは1日当たりでは1200人となります。次いでテキサス州が35万人、ノースカロライナ州が12万人増、サウスカロライナ州が9万5000人です。一方最大の人口減はニューヨーク州の22万2000人で、次いでカリフォルニア州の21万9000人、イリノイ州の11万人となっており、このような人口の増減は、各州の「勢い」を反映しているといえそうです。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(12/20/2022)

 

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