ムース捜索二日目は「アンセル・アダムスの「スネークリバー・オーバールック」での朝食から」

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Vol.37 ▶︎絶景&コーヒー・・・なんと贅沢!

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アンセル・アダムスは、ヨセミテ渓谷の白黒写真などでよく知られている写真家であるとともに、登山家、そして生涯、自然保護に情熱を燃やした活動家でもある。今日の朝食は、彼の代表作でもあるグランドティトンをバックにスネークリバーを撮影した、スネークリバー・オーバールックの駐車場だ。キャンピングカーの窓越しにはグランドティトンの頂が見える。なんという贅沢だろう。絶景を眺めながらのコーヒーの味は格別だ。

先ほどまで、昨晩に続いてオックスボウ・ベンドでムースの出現を待っていたが、また空振りに終わった。家内と相談し、朝食後はムースが頻繁に出没すると言われるルートをマウンテンバイクで走ってみることにした。 ビジターセンターがあるムース・ジャンクションと、スキーリゾートがあるグランドティトン・ビレッジを結ぶ全長8㎞ほどのひっそりとした林間ルート。5年前には、僅かの差でムースを見損ねた。途中、未舗装部分もあるためキャンピングカーでの乗り入れは禁止されている。こんな時マウンテンバイクは強い味方だ。 野生動物の多くは早朝や、夕暮れ時に食物を求めて活発に活動する。すでに午前10時を回っている。今日はムースはおろか、大型の野生動物に遭遇する確率は極めて低いだろう。それでも、氷河に削られて作られた峰々をバックに風を切って走る喜びは何物にも代えられない。

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アンセル・アダムスもどきの白黒写真。スネークリバー・オーバールックにて

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ローレンス・ロックフェラー・プレザーブという施設が林間ルートの中間地点付近に、人目に触れるのを避けるかのようにひっそりと佇んでいる。ビジネスで名を馳せた、有名なロックフェラー家の一員であるローレンス・ロックフェラーが、熱心に行っていた自然保護活動の一部として始めたものだ。施設内には、ユニークな方法で自然保護を訴える展示物をはじめ、複数のハイキングトレイルなどがある。マウンテンバイクを駐輪スペースに置き、展示物を見る。その後、よく整備されたトレイルを歩きフェルプス・レイクに足を延ばしてみることにした。往復6㎞程度の周回ルートだ。 木漏れ日が差し込むマイナスイオンで満ちた渓流沿いのルートを上り詰めた先で、フェルプス・レイクは青々とした水を湛えていた。湖畔では、年配の女性パークレンジャーがハイカー達と歓談していた。軽食を摂り、湖に足を浸し涼んだ後に帰路についた。

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道中は未舗装部分もあるためキャンピングカーでの乗り入れは禁止されている。マウンテンバイクは強い味方だ。

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しかし、周遊コースであるはずのルートが数百メートル先の川辺で行きどまりになっているではないか。渡るための橋はない。仕方なく、先ほどのパークレンジャーに尋ねるべく、来た道を引き返した。 再び湖畔に着くと、先ほどの年配のパークレンジャーが、子供たちが浴びせかける無邪気な質問に丁寧に答えているところだった。小学校高学年と思しき男の子がレンジャーに尋ねた。「いつ、どこに行けば、クマやムースを見るられるの?」。レンジャーが答える。「熊は難しいわね。いつも動き回っているから。でもムースは比較的簡単よ。日の出や日没のころにグロスベンター・リバーに行くとかなりの確率で見られるわよ」。道に迷って引き返したお陰で、思わぬ情報を得ることになった。子供たちの質問が終わるのを待ち、レンジャーに手持ちの地図上で場所を確認してもらい、帰り道を確かめ、喜び勇んで湖からの帰路に就いた。

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(11/9/2022)


 

Nick D (ニックディー)

コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。

http://nick-d.blog.jp

 


 

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