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アメリカ101 第159回
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中間選挙の投票日(11月8日)が迫ってきました。4年に一度の大統領選挙の中間にあたる年に実施されることから「中間の選挙」と呼ばれており、今回は連邦レベルでは下院議員(定員435人)全員、そして上院議員(定員100)の約3分の1にあたる35人が改選の対象となります。加えてカリフォルニア州知事選やロサンゼルス市長選など地方自治体の多くで、さまざまな選挙が実施されます。アメリカ全土で活発な選挙戦が繰り広げられているわけですが、今回は「知っているようで知らない」アメリカの選挙のおさらいです。
たとえば、「上院の議員定数は100人で、任期は6年。2年毎に3分の1が改選」となっていますが、「100を3で割る」という割り算で端数が出て、整数とはなりません。そこで100人の議員については、それを分割し、①33人②33人③34というグループに分けて、2年毎の選挙で、それぞれの順序で改選数を定めています。したがって、正確には「約3分の1」の改選となるわけです。
日本での選挙制度と大きく異なるのは、有権者である「選挙人」の実態です。日本では住民登録制度に基づいて住民基本台帳に記載された者で、成年被後見人や服役者などを除き、資格を有する者は、選挙管理委員会から自動的に投票所への入場券が届く仕組みになっているのは、皆さんがご存じの通りです。
一方アメリカでは、選挙で投票するには自ら選挙人登録手続きをする必要があります。日本のような国民すべてを対象とした住民登録制度がないために、アメリカでしばしば身分証明書として使われる州政府運輸当局(DMV)発給の運転免許証(およびDMV発給の居住証明書)を用いて有権者登録するわけです。1993年の全米有権者登録法により手続きの簡素化が図られているものの、日本のように「ただ座っていれば入場券が届き、投票所へ行って一票を投じる」わけにはいかないため、ある程度の政治意識がないとわざわざ投票所に足を運ばないというケースも多く、国際的にもアメリカの投票率は低い傾向にあります。
さらにアメリカでの投票率が低い背景には、相対的に「選挙が多い」ことが指摘されています。たとえば、今回の中間選挙の“目玉”は上下両院の改選ですが、そのうち下院は2年毎という短い任期で全議員が改選の対象です。アメリカ建国の際のフィラデルフィアでの憲法制定会議(1787年)では、上下両院の任期が大きな争点となり、それぞれの州全体を代表する上院議員については、安定した任期が必要という観点から6年となりました。しかし州内のさまざまな選挙区を代表する下院議員の任期については、地元のキメの細かい要求を反映した立法措置が必要との観点から、わずか1年という議論もあったものの、結局2年で決着をみた経緯があります。
現在上院の党派別内訳は民主、共和両党が50議席同数で、キャスティング・ボート(casting vote)は上院議長を務めるカマラ・ハリス副大統領にあるため、実質的には民主党が支配。また下院も民主党が220、共和党が212議席(欠員3)と僅差で民主党が多数派です。しかし中間選挙では歴史的に政権党への厳しい判断が下されるケースが通例です。このため下院では民主党が少数政党に転落するとの見方が支配的で、上院でも接戦が続き、両院で共和党が多数を制する可能性もあり、バイデン政権が苦しい局面に直面する見通しです。
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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(11/1/2022)