西川僚子: 林学に興味をもったのがすべての始まり わたしのEsri愛は深い

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西川僚子
Ryoko Nishikawa

Esri(地理情報システムのソフトウェア会社)
ローカリゼーション・エンジニア 

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■Esriの正門前dで。

Esri(エスリ)は、実は我々が日頃非常にお世話になっている会社である。直近では、2020年1月にいち早く全世界の新型コロナウイルスの感染者情報を公開したジョンズ・ホプキンズ大学の「COVID-19 Dashboard」があるが、この空間モデリングに使われたのがEsri社のプロダクトであるArcGISというソフトだ。

Esriは、地理情報システムのソフトウェアを作っている加州レッドランズ市に本社を置く会社である。このダッシュボードには1日10億以上のアクセスがあり(2020年1月時点)、ここに掲載されている情報やマップは数多くの報道機関で引用され、出典元としてジョンズ・ホプキンズ大学の名前を目にした人も多かったことだろう。ここでローカリゼーション・エンジニアとして働いているのが西川僚子さんである。開発されたプロダクトは39言語に翻訳され、世界中で使われているが、彼女はその全体のマネジメントをおこなっている。「私のEsri愛は筋金入りですよ」

■社内にある巨大地球儀とともに。

 福岡で生まれ育った西川さんは、かねてから森に興味があった。「とにかく自然が好きだったんです」森を研究したいと思い、九州大学に進学し森林計画学を専攻した。同大学院では「竹林拡大の問題」に焦点をあて、フィールドワークに勤しんだ。「感覚的にそれが問題だと知っていても、具体的にどう問題なのか研究します。航空写真を重ね、時系列で竹林面積の変化を把握していきました」竹林の分布を調べる際、航空写真や衛星写真を使うが、そこで目にしていたのがEsriという名前である。Esriはさまざまな地理空間情報を重ね合わせて関連性を解析し、可視化するツールを提供していた。彼女はその会社に興味をもった。

(左)■大学院在学中、屋久島の世界遺産内にある花山広場にて森林調査。西川さんは右端真ん中。
(右)■2007年に初めてユーザー会に参加した際のもの。創業者兼社長のジャック・デンジャモンドとの1枚。

 それがすべての始まりで、東京にあるEsriジャパンに入社した。2007年、サンディエゴで行われたEsriユーザーのためのカンファレンスに出張し、その熱狂に圧倒され「アメリカの本社で働きたい」という思いを強くした。その願いが通じ、翌年1月駐在が決まる。「仕事も楽しく働きやすいし、もう日本には帰りたくないなって」その後、本社に転籍し、現職に至る。「うちの社員はフルタイムでも全員時給制で、米国には珍しくレイオフはないんです」Googleが誕生する前、デジタル地図を実質的に発明したのは、Esri創業者のジャック・デンジャモンドだった。Google Earth、Google Maps、Google Street Viewといった製品は、彼が作ったものの肩の上に作られたといっていい。Esriの技術は今や世界中の企業、政府機関、NGOに利用されており、これらを合わせると、驚くべきことに毎日1億5000万の新しい地図が作成されていることになるという。地図を制す者は世界を制す、かもしれない

(11/1/2022)

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