14時間40分。念願の「You are an Ironman !!!」

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Vol.34 ▶︎ ゴール姿はカッコよくありたい・・・な

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後半になってペースを維持するどころか、スピードは上っている様だ。レース終了後に知ることだが、最後のランで678順位を延ばしている。 暗闇の中、沿道からの声援を受け走り続けること4時間40分。遠くから大音量で流れる音楽、そしてゴール脇の実況中継が聞こえてくる。感極まって目が潤み始める。ゴール写真は格好良くありたい。涙を隠すべくサングラスを掛けた。レンズが一気に曇る。周囲がよく見えないまま足を前に進める。ゴール周辺は大勢の人が放つ興奮と歓声に包まれている。何処かに家族がいるはずだ。周りを見渡す。レンズの曇りと興奮で何が何だか分からない。アドレナリンの影響だろうか、意図せず足早になる。感動の瞬間を楽しむ間もなく目の前にはゴールのアーチが迫る。残すところ十数メートル。名前が呼ばれる。そしてフィニッシュライン。「Youarean Ironman !」夢にまで見たこの瞬間。念願のアイアンマンの完走メダル。首にかけられたそれはずっしりと重い。身体を覆う疲労と達成感・・・ふっと我に返る。「あれ、ゴールの喜びを分かち合う筈の家族はどこだ? ヤバイ、見逃してしまった・・・」。

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念願のアイアンマンのゴール。目標時間の15時間を下回る14時間40分。3千数百人中、1713位

ゴール脇の人込みをかき分け、暫くして何とか家族と落ち合う事が出来た。自分の事のように喜ぶ家族。何処にいたかと尋ねると、返ってきた答えは、サングラスをかけた私はゴールの数十メートル前で待っていた家内と娘の横を猛スピードで素通り。その後、ゴール付近にいた息子にはハイタッチをしたとの事。曇ったレンズで見えないまま多くの観衆にハイタッチをした、その一人が息子だったようだ。念願のアイアンマンのゴール。ここまで私の身勝手な挑戦を支えてくれ、今回も渋々アリゾナまで来てくれた家族には申し訳ない気分で一杯だ。「ごめん、次回はちゃんと見つけるから」と詫びの言葉を伝える。目の前には、「え~、一生に一度きりの挑戦って言ってなかたっけ?」と驚きの声と共に、責めるような目で私を見詰める三人の姿があった。 ワンポイント・アドバイス   アイアンマンレースの栄養補給 スプリントから始め、オリンピック・ディスタンス、ロング(またはハーフアイアンマン)と徐々に距離を延ばしていくと、異なった課題が見えてくる。距離が短いうちはスイム、バイク、ランと、それぞれの種目で練習を重ねる事でそれほど無理なく完走できる。距離が延びるに従って、ブリックトレーニングと呼ばれる複数種目を続けて行うトレーニングが重要となるが、特にバイクの後のランは慣れないと思いのほか辛い。ロングからアイアンマンの距離になると、体を動かしている時間が一気に延びるため、これらのトレーニングと合わせて栄養補給が極めて重要なのだ。 私の場合は、トライアスロンに次いで、ウルトラマラソンを始め、栄養補給の重要さを更に痛感している。

アイアンマンなど10時間を超える長時間レース完走のためには、トレーニングのプランと合わせて、栄養補給プランを立てる必要がある。充分なカロリー摂取を怠ると、ハンガーノックと呼ばれるエネルギー切れの症状で全く動けなくなる。また、疲労と継続的な振動で消化機能が落ちた胃袋に食料を入れると、吐いたり、下痢を起すことも。どちらの場合も必要なカロリーを摂取できないためレースを継続することは不可能だ。 栄養補給のプランを立てるに当たっては、様々なものを試して、自分にあったカロリー源を見つけよう。私の場合は、プロテインが多く入った食べ物やドリンクは、胃が受け付けない。何が自分に合うかを正確に把握するためには、ある程度レース環境に近い疲労状態に身を置く以外に方法はない。 必要なカロリーは個人差があるが、私の場合は一時間に300kカロリーを目安にしている。粉末ドリンク、ジェル、エナジーバーが主な補給食。あまりピンと来ないかもしれないが、何時間も同じものを無理やり食べるのは容易ではない。色々なものを試して、ある程度バラエティーを考慮した補給食を準備することをお勧めする。塩入スイートポテトはかなりキツイので要注意。更に日頃から、食事後直ぐにトレーニングをしたり、短い距離でも食べながら走るなど、体を慣らすのもお勧めだ。

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愛用のテイルウィンド粉末ドリンクとハニーストリンガー

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(10/18/2022)


 

Nick D (ニックディー)

コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。

http://nick-d.blog.jp

 


 

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