甚だ場違い・・・「USA’s Toughest Triathlon」にエントリーしてしまった

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Vol.26 ▶︎“This is not a Joke! ”(涙)

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イチゴ畑でのスプリントと呼ばれる初心者でも気軽に挑戦できるトライアスロンを何とか完走し、調子に乗った私は、スイム1500m+バイク40km+ラン10kmのオリンピック、またはインターナショナル・ディスタンスと呼ばれるレースを探し始めた。 しかし思ったようなレースが見つからない。と言うのも、前回の海での恐怖があまりにも強烈で、海はこりごり。

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従って湖でのスイムを前提としたレース選びとなるが、それほど数は多くはない。湖でのレースは山間部で開催されるものが多い。となるとバイクの上り坂が多くてキツそう。こちらを立てれば、あちらが立たず。選択肢は狭まる一方。なんとか意を決して申し込んだのが、近所で開催される小規模なレースで、「USA’s Toughest Triathlonアメリカで一番タフなトライアスロン」と謳われた大会。申し込みサイトでも「This is not a Joke!  これは冗談じゃないよ」と念を押す始末。まぁ、たかが40kmのバイク、キツイって言っても、スイムと違って溺れて死ぬわけではないし、と軽く考えてのエントリーした。

素人の浅はかさだったと気が付いた時には、既に時遅し。 自宅から30分程度の距離にあるCastaic Lakeと言う小さな湖で開かれる大会。幸いにもレースの2週間ほど前に、バイクの練習ライドがあるというメールが主催者から届いた。折角なので、最近ロードバイクを始めた友人にも声を掛けた。余り聞き慣れないイタリアメーカーの友人のバイクと共に、私の買ったばかりのキャノンデールを車に搭載して出発。二人揃ってほぼ新品のバイク。傍から見れば、おそらく素人丸出しだろう。 集合場所で、先ずは今回の練習ライドとレース当日のルールのブリーフィングがあった。

内容はというと、「追い越しの時は何秒以内で」、「前のバイクとの距離は・・・」、「カーブでの追い越し禁止」、「下りでのエアロバーポジション禁止」、「タイヤの空気圧のお勧めは・・・」などなど。ただ“自転車”で走ればいいと思って気楽に来たはいいが、さっぱり意味の分からないことばかり。更に、多くは聞き慣れない英語のボキャブラリー。スペイン語を母国語とする友人と二人で、甚だ場違いな所に来てしまったと顔を見合わせた。 とりあえず、前の人に着いて行けばいいやと、朝の涼しい風を浴びて颯爽と走り出したまでは良かったが、2~3kmも行くと、いきなり急勾配の上り。しかもこれが長い。一旦、平らになったかと思うとまた直ぐに上り。

続いてスキースロープのようなカーブだらけの下り坂。上り下りを幾度と無く繰り返すし、とどめは延々と続く終点が見えない超急勾配の下り坂だ。往復ルートなので、帰りはここを上るのは間違いない。近い将来に訪れるであろう悲劇を想像し、下りで既に泣きが入っている。そんな状況下で、苦楽を伴にする筈の友人は、坂の途中で「実は風邪気味で、呼吸が少し苦しいんだ。先に行ってて」と言い出す。来る途中の車の中ではそんな事は、一言も言っていなかったのに・・・。

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苦しみを分かち合う友を失い、独り先の展開に不安を抱きながら、容赦なくバイクを下へ下へと運ぶ重力に身を委ねること十数分、漸く折り返し地点に達する。ここからが正念場だ。 上りは予想通り、というか予想以上に厳しい。スピードが上らないためフラフラして立ちゴケ寸前。慣れないクリップ式のペダルが不安を増幅させる。10分もしないうちに太ももが悲鳴を上げだす。バイクを降りて押す人たちも多くいる。皆口々に「This is not a joke at all ! マジでジョークじゃないよ、これ!」とホームページの警告文を繰り返す。

値の張りそうなトライアスロン用のバイクの若い兄ちゃんが途中で座り込んでいる。四苦八苦しながらも、立ち漕ぎでその横を抜いて行くのは、多少なりとも気持ちがいい。然し、未だ先は泣きたくなるほど長い。既にこの時点でヨレヨレの自分の細い太腿を見て、道理で競輪の選手は腿が太いはずだと今更ながら納得した。2週間後のレースでは、この後に走るのかと思うと、今更ながらトライアスロンがハードなスポーツであることを実感せざるを得ない。更に、苦手な泳ぎが最初に控えている・・・。

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(8/24/2022)


 

Nick D (ニックディー)

コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。

http://nick-d.blog.jp

 


 

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