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Vol.23 ▶︎勘違いでとんでもない事を始めてしまった!
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トライアスロンを始めてみたいけど、なんだか色々大変そうだなぁ、と二の足を踏んでいる人は少なくないだろう。確かにトライアスロンを始めるにはそれなりの覚悟がいる。スイムは苦手だなぁとか、バイクやウエットスーツもいるのかなぁとか、安い買い物ではないなぁとか。私もその一人だった。以前から、漠然とトライアスロンに対する憧れのようなものがあった。理由はたわいないもので単純に「トライアスリート」という響きの格好良さ。でもなぁ・・・とやらない理由を挙げればきりがない。
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数年前、何を勘違いしたか道具もないまま思い切って始めてみた。いざ始めてみると確かに大変なこともあるが、その分、達成感も極めて大きい。「トライアスロンやってるの、凄いね」と周囲の見る目も変わってくる。多くは些細なことだが、一度始めると継続するモチベーションには事欠かない。詰まるところ、はじめの一歩をどうやって踏み出すかと言うことに行き着く。
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と言う事でトライアスロンしたいけど・・・と思っている人に気軽に初めの一歩を踏み出してもらうべく、私のかなり情けないトライアスロンの話をシリーズでお届けしたい。 本気で考え始めた切っ掛けは、フルマラソンの完走。初めてのフル挑戦で望んだロサンゼルス・マラソンで、そこそこのタイムで完走出来た。すると、なんだか何でもできる気になった。そこで以前から憧れていたトライアスロンに挑戦しようと言う事に。問題は、泳ぎはかなり苦手。更にまともなバイクも持ってない。要するに、できるのは走る事だけ。まぁ自転車はマウンテン・バイクでいいかと気楽に考えた。、それよりも先ずは泳ぐ練習。ということで、会員になっていたが殆ど行っていなかった近所のジムのプールで泳ぐ練習を始めるとともに、ビギナー向けのレースを探し始めた。
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数日後、家から程近い距離で、波の穏やかそうなビーチで開催される「ストローベリーフィールド・トライアスロン」という可愛い名前のレースを見つけた。先ずは気が変わらないうちに申し込み。400mスイム、イチゴ畑の周りをバイクで20km、最後に海外沿いの5kmのランで締めくくる、所謂スプリントと呼ばれる一番距離の短い初心者向けのレースだ。とりあえずは、25mプールを何往復もして、1km程度は泳げる準備をした。
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バイクは、隣に住むLAPD(Los Angeles Police Department)勤務の友人がロードバイクを貸しくれて練習も順調。一番安いウェットスーツを100ドル程度で購入し一応レースに参加できる準備ができた。 自転車には子供の頃から乗っているし、走るのはフルマラソンを完走して自信満々。その一方で、レースが近づいてくると、海や湖といったオープンウォーターで泳いだ経験が殆どないので、だんだん不安になってきた。「塩水を飲んだらむせてパニくるだろうなぁ」とか、「足が届かないところで溺れたらどうしよう」とか、不安は増すばかり。 そこで、メキシコに住む沖縄の離島出身の親友にメールをし、海での泳ぎ方のコツを請うた。子供の頃から銛で魚を突いて食料を確保していた海人(ウミンチュウ)らしく、「簡単だよ、波の上がり下がりを見て、うねりが上ったときに一気に沖に向かって泳ぐんだ」との事。そもそも、メールで泳ぎ方を教えて貰おうという試みに無理があったようで、不安は一向に解消されないままレース当日を迎えることになった。
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当日は、波の穏やかな快晴、絵に描いたようなカリフォルニアの夏。実は少し前に、よせばいいのにベニスビーチで開催されたLAトライアスロンを見に行った。当日、海は大しけで背丈ほどの波がビーチに次から次と打ち寄せ、選手たちは最初の波を超えるのに一苦労。中には制限時間内に最初の波を越えられず、レース継続を諦めざるを得ない、DNF (Did Not Finish)になった選手もいた。スイム・バイク・ランのレーニンに励んだ結果が、海に出ることも出来ずに敗退では悲しすぎる。このシーンが海に対する恐怖と不安を増幅させる事になった。
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(8/10/2022)
Nick D (ニックディー)
コロンビア、メキシコなど中南米での十数年の生活を経て、2007年よりロサンゼルス在住。100マイルトレイルラン、アイアンマンレースなどチャレンジを見つけては野山を駈け回る毎日。「アウトドアを通して人生を豊かに」をモットーにブログや雑誌への寄稿を通して執筆活動中。