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アメリカ101 第123回
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ジョー・バイデン大統領の率いる民主党が今年11月の中間選挙を控えて「大変なこと」になっています。その悲惨な状況は「民主党は『この世の終わり』を回避できるか?」(Can Demos Dodge Doomsday?」(ニューヨーク・タイムズ紙2月20日付け)、「嫌われ者となった民主党、今や農村部で絶滅を危惧」(The Brand is so toxic, Demos fear extinction in rural US)(AP通信同17日配信) といった雄弁な見出しが証左です。有権者の支持を急激に失いつつある同党が中間選挙では、単に政権政党として上下両院で議席を減らすという通常の政治サイクルとしての展開ではなく、歴史的な惨敗を喫する兆候が顕在化しているというわけです。
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その予兆となったのは、昨年11月のバージニア州知事選挙です。民主党が、首都ワシントンに接した人口密度の高い北部で優勢の一方、南部の農村地域が共和党優位という対照的な「政治風土」。2020年の大統領選挙では、バイデンが現職のドナルド・トランプに得票率で10ポイント差で楽勝するなど、近年は全体として民主党が先行する州でした。序盤戦では民主党候補のテリー・マコーリフが優位にあったものの、終盤で共和党候補で実業家グレン・ヤンキンが巻き返し接戦となり、バイデンや副大統領のカマラ・ハリスが急遽現地に応援に駆け付けたものの、僅差での番狂わせの共和党知事誕生となりました。同州での共和党知事は2009年以来です。
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これには、バイデン政権の不人気が影を落としていました。各種世論調査の支持率平均値を集計している「538」サイトによると、2021年1月の就任直後は52%強だった支持率は同9月には47%の同率に低下。その後も下落を続けて今月20日現在では支持率は41%い落ち込み、不支持は53%となっています。
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バイデンは、「ハチャメチャ」のドナルド・トランプに比較して、その政策よりも、何より誠実で他人の気持ちを理解するというempathy(共感)が最大の持ち味です。しかし大統領に就任して以来、特筆される、これといった目玉となる成果もなく、持ち味を発揮することもなく、ズルズルと続く新型コロナウイルス禍やインフレの加速的な高進で味噌をつけ、さらにウクライナ情勢ではロシアのウラジーミル・プーチン大統領に引きずり回されている感が拭えません。
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冒頭で挙げた「この世の終わりに直面する民主党」の現状を描いたのはニューヨーク・タイムズ紙の著名コラムニスト、モーリン・ダウドです。「好転する」「上向く」といった楽観論を繰り返すバイデンですが、多くの国民が「exhausted」(疲れ果て)、「confused」(困惑し)、「isolated」(孤立し)、「depressed」(落ち込んでいる)と精神状態にあると指摘。そして、歴代民主党政権を支えてきたストラテジスト(ブレイン)の聞き取りから、党内左派のかく乱で足並みが乱れ、挙党体制を構築できないまま浮遊する政権与党・民主党が、その責任を問われて中間選挙で高い代価を払うシナリオを描いています。
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サンフランシスコといえば、有数なリベラルな政治志向の都市で、公選の教育委員会(定員7人)も民主党左派系が多数を占めています。だが2月15日に行われた委員3人のリコール(解任)投票があり、いずれも大差でリコールが成立、解任となりました。リモート授業に固執し、エリート高校入学選考での抽選制採用、さらには人種差別での瑕疵(かし)があったとして、「建国の父」ジョージ・ワシントンや「奴隷解放宣言」のエイブラハム・リンカーンといった歴史的な大統領の名前の公立学校の名称変更の検討を進める動きに対して、「リベラル派の行き過ぎ」と強く反発する市民運動が盛り上がり、民主党の大敗となりました。明るい材料がないまま、バイデンと民主党は中間選挙に向け苦戦を強いられています。
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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(2/22/2021)
初めてこの連載記事を見ました。トランプ元大統領のことをハチャメチャという言葉で表現されたのに反感をもちました。