“和”の感性と広大な自然 融合アートで喜び伝える(7/16/2019)

アーティスト
森山 正 / Tadashi Moriyama

 DTLA近くのスタジオでキャンバスに向かうのは、アーティストの森山正さんだ。

「自分が感じた喜びを視覚化し、その絵で人に喜びを与えたい」という思いから色を塗り重ねる。

絵画に興味を持ったのは中学生のころ。上野の森美術館にMOMAを見に行き、一気に見方が変わった。

「それまでは、絵は本の中での平たいものだと思っていた。それが、特にゴッホとか3Dでボコボコ突き出ていて、色も目に焼き付いて」。ゴッホらの現代美術作品を見て、自分も絵を描きたいと思うようになった。

16歳のとき、交換留学でオレゴンへ。「こんな世界があったのか」と、人々の人生の楽しみ方が自分とはまったく違うことに衝撃を受け「絶対にまたアメリカへ行こう」と心に誓った。

日本へ戻り、英語の勉強に励みつつ絵を描く学生生活を送り、美大に進学。

2004年、ペンシルベニア大学芸術大学院でやはり絵の勉強をしていた妻のレイチェルさんに出会う。2年後に大学院を修了し、NYCでアーティストとしての生活が始まった。

イタリア、サンフランシスコで個展を開き、マイアミやNYのアートフェアに出店するなど順調に活動していた森山さんが、レイチェルさんとともにロサンゼルスへ移住したのは5年前。

「LAに来て良かったのは、自然に近いということ。NYでは都会に入り浸る生活だった。ここでは自然の中へ出かけていくので、作品にもそれが現れる」。

NYで描いていた絵は「内に入っていく」イメージだったが、LAではより開放的に外へ向かっていく作風に変化。満天の星空や、Sci Fi系のイメージの作品に仕上がっている。

東京育ちの森山さんが、カリフォルニアの広大な土地を眺めているうちに変わった。

「アメリカ西部の色鮮やかで宇宙に延びていくような風景をインスピレーションにしたSF物語を作りたい」と、アニメーションも並行して制作している。

「絵だけだと『きれいだね』で終わってしまったり、メッセージがなかなか伝わらないことがあるけど、そこに動きが加わるとストーリーが生まれてくる」。

「絵を描くのはエクササイズと同じ」と、スポーツ好きらしい独特の表現をする。ウォーミングアップして徐々に体を動かし始め、波に乗るまでは苦しい時間だが、リズムが出てくれば「産みの苦しみ」は楽しさへと変わり、作業に没頭しはじめる。

「地球規模の社会問題などのテーマから描き始めることがあるけれど、そこに対する恐怖を助長するのではなく、その先にある希望や夢を表現したい」。

自分の感情を描いているからこそ、その時々で違った作風の絵ができあがる。それが森山さんの作品の魅力でもある。

大都会NYから自然あふれるCAへ移住したアーティストの森山正さん。「米国西部の広大な土地を見ているうちに作風が変わってきた」と話すように作品の幅が出てきた。宮崎駿など日本のアニメーターの映像作品にも深く感銘を受けたといい、アニメーション作品も手がけている。
公式サイトはhttp://tadashimoriyama.com/

10月26日には妻レイチェルさんとの二人展をLAでは初めて開催する。レイチェルさんはモノクロ系統の作風で、森山さんはカラフルな色使い。一見、真逆のようだがどこか共通点もあるという

「ち密さなどに日本人らしさが出ていると思う」という作風には、「水墨と一本の筆で自分の心の流動性が具現化できることに感動した」という書道も影響。また、禅宗仏教徒の父の影響で子どものころから坐禅をして過ごし「只管打坐(ただひたすら坐り一筋に一つのことに専念する)」という教えは、今でも制作の支えになっている

 

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