プロダクションデザイナー
野畑 太陽 / Taiyo Nobata
「映画作りには純粋な楽しさがある。さまざまな問題をなんとかしようともがくのは苦しいけど、同時に楽しい。そこがデザイナーの意義でもあるから」。
2年前からロサンゼルスで映画のプロダクションデザイナーとして活動する野畑太陽さんは、日本ではインダストリアル(工業)デザインを勉強していた。
しかし、映画『ブレード・ランナー』などで知られるコンセプトデザイナーのシド・ミードの画を見てプロダクションデザインというものが存在するのを知り、もともとの映画好きもあって「映画といえばLA」と考え、渡米した。
LA Film Schoolを昨年卒業し、現在はフリーランスのプロダクションデザイナーとしてインディペンデントの映画制作に携わっている。
小さな頃から絵を描くのが好きで、子どものころは漫画家になりたかったという野畑さん。物語が好きで、漫画や映画が大好きだった。
父はトイデザイナー、母は建築士という環境で育ち、デザインやインテリア、空間デザインに触れる機会が多かったことを考えれば、クリエイティブな関心が育ったことは必然だったと言える。
プロダクションデザインとは、映画のフレームの中にある色使い、部屋のスタイル、デクスチャーなどすべてのデザインを行い、スクリプトをビジュアル化する仕事。
「一番楽しいのはスケッチしているとき。時間的なプレッシャーもあり、バジェットの中でデザインを成立させないといけない。その中で自分の色を乗せていい作品を作るのは楽しくもあり苦しくもあるけど、最終的に映像ができると解放感がある。だからまた次に向かえる」。
監督とどれだけコミュニケーションを取れるかも非常に重要だ。
「映画を作るのは個人作業ではない。コラボレーションが空間(絵)を生み出す」。
譲れない部分はプロデューサーと交渉し、低予算でどういいものを作れるかがプロダクションデザイナーのスキルの一つであり、クリエイティブな部分でもある。
「お金がないと作れないという考えは好きじゃない」というこだわりを明かす。
これまで2年間でショートフィルム24本を制作し、最近は環境に優しい映画業界を作りたいという気持ちが芽生えてきたという。
「映画のセットは作って撮影したらもう用なしで、壊して捨ててしまう。もったいないし、環境にも良くない」。
エコを意識すると必然的にコストは上がる。
「素材別に分別して処分したり、ペットボトルやケータリングの残りをどうするかとか、そういった細かいところから一人ひとりの意識を変えていかないと」。
プロダクションデザイナーとして大きくなると同時に、エコフレンドリーな業界を作るのが今の目標だ。
プロダクトデザイナーからプロダクションデザイナーへ転向した野畑太陽さん。昨年からLAでフリーランスとして活動する。https://taiyonobata.weebly.com/
プロダクトデザインの仕事は「一番楽しいのはスケッチしているとき。時間的なプレッシャーもあり、バジェットの中でデザインを成立させないといけない中で自分の色を乗せていい作品を作るのは楽しくもあり苦しくもある」
将来的にはキャリアを積んで影響力を持ち、「映画業界をエコフレンドリーに変えていきたい」と話す