グラフィックデザイナー
原 研哉 |Kenya Hara
日本の魅力の諸相を「世界を豊かにする日本」として表現・発信することにより、日本への深い理解と共感の裾野を広げていくための海外拠点事業「ジャパン・ハウス」は、昨年よりロサンゼルス、ロンドン、サンパウロの3都市に事業拠点を開設し、展示スペース、シアター機能のある多目的スペースなどをオープン。現在、ハリウッド・ハイランドセンター内にあるジャパン・ハウス・ロサンゼルスの展示ギャラリーでは5月23日まで「TAKEO PAPER SHOW『SUBTLE―かすかな、ほんのわずかの』」展を開催。ジャパン・ハウス総合プロデューサーであり、本展示のキュレーター兼ディレクター、日本を代表するグラフィックデザイナーである原研哉さんに話を聞いた。
「このギャラリーでは、日本を紹介することを趣旨として、数ヶ月を会期とする日本からの巡回展や、現地のキュレーターによる展覧会を開催する計画となっています。私がデザインの世界に入った頃は、展覧会を作って海外で巡回できる場所を設けるのが難しかった。今後はこのジャパン・ハウスが、日本の若い才能や可能性を海外で表現したり発表できる場所になれればと思っています」
岡山県出身、武蔵野美術大学大学院デザイン専攻を修了後、日本デザインセンター入社、現在同社代表。長野オリンピック開・閉会式プログラム、EXPO2005愛知公式ポスター、無印良品アートディレクションなど数多くのデザインを手掛け、独自の視点を広告やプロダクト、空間デザイン、催事計画など、常に新しい活動領域で表現してきた。「私は、デザインとは本来一つのものであって、グラフィックとか空間デザインなどと、完全に分けられるものではないと思っています。ですから領域に関係なくあらゆることをデザインしていくように自然になっていきました」
中でも、株式会社竹尾の企画「竹尾ペーパーショウ」に長年携わり、29歳から6年間ほど同企画のアートディレクターを担当。そこで加工技術や印刷技術などを深く掘り下げ、紙にまみれて過ごした時代は、自分の初期のデザイナーとしての中核をなしていると話す。「昨今では、紙は印刷メディアという言われ方をして、古い媒体だと思われている節がありますが、私は、紙は、いつも人間の身の回りにあって、人間の創造意欲を触発してくれるとても大切なものだと思っています。紙は白くて汚れやすく壊れやすい。しかし人間はその紙の上に黒々と墨で文字や絵を描いて物を作り続け、成功もして、失敗もしてきた。今回の『SUBTLE―かすかな、ほんのわずかの』展は、見ていただけると、感覚の目盛りが十倍くらい細かくなるような、繊細で静かであるけれど同時に大きな衝撃力がある、そんな展覧会になっているんじゃないかと思います」。
ジャパン・ハウス総合プロデューサーを務める原研哉さん。コミュニケーションを基軸とした多様なデザイン計画の立案と実践を行っている。日本デザインセンター代表。武蔵野美術大学教授。無印良品アートディレクション、代官山蔦屋書店VI、HOUSE VISION、らくらくスマートフォン、ピエール・エルメのパッケージなど活動の領域は多岐。デザイン賞を多数受賞。
ハリウッド・ハイランドセンター内にあるジャパン・ハウス・ロサンゼルスの展示ギャラリーでは5月23日まで『TAKEO PAPER SHOW『SUBTLE』(竹尾ペーパーショウ『サトル』)』を開催。
1965年以来開催の紙の展覧会「竹尾ペーパーショウ」は、日本国内の紙関連業界において紙文化の発展に貢献してきた。つねに時代の先端を示し、トップクリエイターとともに新しい紙の可能性に挑む試みを続ける。