「客席のエネルギー満たす映画づくり」(5/10/2018)

映画監督

北村 龍平 |Ryuhei Kitamura

 6人の大学生を乗せた車が、荒野のど真ん中を走っている最中にパンク。修理を始めた学生たちは、この事故が単なる偶然ではなく、タイヤが何者かに撃たれたことに気づく。やがて見えない敵からの狙撃が始まり……。あらすじからでさえスリル感が味わえるホラー映画『ダウンレンジ(Downrange)』。自身の新作である同作品がロサンゼルスでプレミアを迎えた北村龍平監督に話を聞いた。


 「僕がホラーやスリラー映画を撮る時は、予測不能な動きをするジェットコースターに乗ったようなスリルを味わえるものを作りたいと、常に思っているんです。映画はエンターテイメント。スクリーンに向かっている間は時を忘れるほど楽しめて、終わった時には爽快な気分を味わえる。観客に何かしらのエネルギーを与える力が無いと、それは映画とは言えないと僕は思うんです」


 99年に渡部篤郎主演『ヒート・アフター・ダーク』で監督デビュー。『VERSUS(ヴァーサス)』(01年)はトロント国際映画祭のミッドナイトマッドネス部門で北米プレミア上映されるなど世界的に高く評価され、『あずみ』(03年)、『ゴジラ FINAL WARS』(04年)と立て続けに大作のメガホンを取った。10年前に渡米。ハリウッドでの第一作目『ミッドナイト・ミート・トレイン』(08年)を製作以降、ロサンゼルスを拠点に活動を続けている。


 「5年前に久々に日本で監督した実写映画『ルパン三世』は、僕にとって大きな挑戦でした。国民から大々的に支持されるルパン三世は偉大なプロジェクトでプレッシャーも大きかった。それでも監督の仕事を受けたのは、常に違うものを作りたい、逆境をどう乗り越えるかのチャレンジをし続けたいという気持ちからでした。そしてそのルパン三世の後に撮ったのが今回の『ダウンレンジ』。前作品とは真逆の、自分の原点に立ち返るものを作りたかった」  20年ほど前に3000万円の低予算で撮ったインディーズムービー『ヴァーサス』。無名で金もなかった時代に周りに反対され、借金もして、それでも山にこもって撮った同作品は自身の原点。大きな看板がなくても自分にしか生み出せない作品でいつでも世界で勝負できる自信があると話す。


 ハリウッド映画を観て育ち、17歳の頃から「自分が作りたいものを作る」ことだけを見つめて突っ走ってきた。その焦点は1ミリもブレることはない。「自分のやりたいことに対してどれほどの情熱を注げるか・・・。僕のやりたいことは、最高だと思える映画、オーディエンスに楽しいと思ってもらえる映画を作ってお金を稼ぐという極めてシンプルなことです。極端なことを言うと、やりたくないことをやってまで生きていたくない。でも死にたくないから一生懸命にやる。モチベーションてそういうものだと思うんです」。

「17歳でオーストラリアへ渡り映画制作を学びました。その後21歳から3年ほどはいろんな経験をした。面白い映画を作るためには、まず自分が面白い人間にならないとだめだと思ったんです。オーロラを見にアラスカに行き、車で北極まで行ったり、新巻鮭の解体工場や高層ビルの窓拭き、政治家秘書など様々な仕事をして金が貯まったらまた旅に出る。そんな経験が映画監督としての糧になっています」と語る北村龍平監督。

北村監督最新作『ダウンレンジ(Downrange)』は、ホラーやサスペンス映画に特化した配信サービスSHUDDERやiTunes、Amazonビデオでも配信がスタートした。

昨年のトロント映画祭でのワールドプレミア。舞台挨拶を行う北村監督。

 

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