横須賀ワッペン、カッコイイ

 最近横須賀によく出かける。横浜・横須賀道路の横須賀インターを出てトンネルを抜けると突然海が開け、海上自衛隊の艦船と米国海軍第七艦隊の空母が目に飛び込んでくる。

 米国が横須賀を母港にする歴史は古い。ミッドウェイ(1973~1991)、インディペンデンス(1991~1996)、キティーホーク(1998~2008)、ジョージワシントン(2008~2015)、現在のロナルドレーガン。そして本年度中にジョージワシントンとの交代が予定されている。昨年は母港化50周年反対運動もこの地で開催された。空母の動力源である原子炉の問題もあり、これからも議論は続くだろう。

 難しい問題は後回しにして、私がこの町に来るのは3つの目的がある。先ずは平日の人気の少ない夕暮れ時に「どぶ板通り」を昔の自分を思い出して歩く。これがいい。60年代のアメリカを彷彿させる寂れたBARから聴こえてくブルース。屈強な若い黒人カップルや故郷に恋人が待っていそうな水兵さんが街角に。やっぱり横須賀は空気が違う。2つ目はLAの郊外にありそうな、ビリヤード台が雰囲気を出す最近お気に入りの「アルフレッド」で、むちゃくちゃ美味しいハンバーガーを食べること。その後お目当てのワッペン専門店「ダイヤモンド商会」(1951年創業の老舗)に向かうのが定番だ。かつては10件近くあった専門店も今はここだけに。

 店内はこれでもかとワッペンだらけ。長い歴史がある。空母の乗組員達が日本を去る前に、思い出としてオリジナルのワッペンを作る。色鮮やかでユニークな図柄は見ているだけで楽しい。スカジャンの背中で「吠える虎や竜」の見事な刺繍同様、繊細に描けるのはやっぱり日本人の器用さなのか。今はデザインデータがあるが、思いがこもったワッペンの出来栄えに嬉しくなる。何よりもこのお店に来たくなる理由は、先代の娘(仁科和子)さんの存在だ。一見普通のおばさま(失礼)にしか見えないのに異常なまでのミリタリー博学!歴史学の講義を受けている気分になり時を忘れる。空母ミッドウェイの1988年と1990年の2度の火災の話が、当時を彷彿させ、もの凄く面白かった。2度目の事故の後ミッドウェイは「頑張れ、おばあちゃん」と呼ばれるようになったらしい。まさに昭和の生き字引。

 買いました「頑張れ、おばあちゃん」ワッペン!これだから横須賀詣では止められない。戦争は反対ですが、ミリタリーファッションはカッコいい。山口百恵・宇崎竜童・横山剣も愛した横須賀、あなたも訪ねてみては。自前の古いジャンパーや革ジャンを持参して、お気に入りのワッペン付けて、波止場でカッコよく決めなくちゃ!

 

 

■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。

 

 

 

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