ハリウッドでも“お墨付き” 宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」

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アメリカ101 第218回

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このようなことを「お墨付き」というのでしょうか。ハリウッド映画界を側面から支える役割を演じているロサンゼルス・タイムズ紙の映画関係を扱う別冊雑誌「The Envelope」は、ここ数週間にわたり、3月10日にドルビー劇場で開催される第96回アカデミー賞授賞式を控えて、各部門での受賞作品/受賞者を予想する特集記事を連載しています。そして、その1月4日号では、長編アニメーション部門を取り上げ、受賞作を予想した6人の映画評論家のうち、実に5人がスタジオジブリの宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」(英語版タイトル「The Boy and the Heron」)を選ぶという、傑出した評価ぶりです。  

この作品は、宮崎駿というアニメ作家として世界的な知名度が高く、これまでに「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「もののけ姫」といったヒット作を送り出し、すでに2001年の「千と千尋の神隠し」でアカデミー賞を受賞したという「巨匠」の7年ぶの作品に相応しい出来栄えだとの評価で、このような前評判から、二回目の受賞が確実視されています。  年明けのロサンゼルス、そして地理的にさらに特定したハリウッドという「エンタメ業界の首都」(The Entertainment Capital of the World)という土地柄に相応しい「季語」があるとすれば、「アワード・シーズン」(Award Season)という言葉が思い浮かびます。  

ロサンゼルスでは年頭から、前年1年間に当地で一般公開となった内外の映画作品を対象に、作品だけでなく、監督、脚本家、俳優など映画製作に関わった業界関係者を対象に、さまざまな分野での優れた業績を対象に表彰する数々のイベントが開催されます。  この「アワード・シーズン」の幕開けを画する、アカデミー賞の“前哨戦”と称されるのが毎年1月のゴールデン・グローブ賞表彰式です。  

今年の第81回授賞式は今月7日に、恒例のビバリー・ヒルトン・ホテルを会場に行われ、アニメ映画部門では、「君たちはどう生きるか」が受賞。同部門では、新海誠監督の「すずめの戸締り」、そして任天堂とアメリカの会社が共同製作した「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」がノミネートされており、日本勢のアニメ映画分野での存在感を示す形となりました。  

そして表彰式シーズンのクライマックスとなるアカデミー賞関係では、23日早朝に一連のノミネーションが発表となり、長編アニメ賞に「君たちはどう生きるか」がノミネートされたほか、日本絡みでは、視覚効果賞に山崎貴監督の「ゴジラ-1・0」、メーキャップ・ヘアスタイリング部門に、アメリカの伝説的な指揮者レナード・バーンスタインの伝記映画「マエストロ:その音楽と愛」(原題:Maestro)でカズ・ヒロさんがノミネートされています。  

ロサンゼルス・タイムズ紙の特集記事では、同紙映画評論担当のジャスティン・チャン、グレン・ホイップ両記者に加えて計5人が「君たちはどう生きるか」をアニメ映画賞に相応しいと推薦。残るひとりの映画評論家は、「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」(Spider-Man:Across the Spider-Verse)をピックアップしているものの、「君たちはどう生きるか」については、「極めて洗練されたアニメ巨匠の作品」として評価。そして、スパイダーマンのシリーズ作品は「そんなに洗練されていないものの、スゲー!(awesome!)」として、選択の理由を説明しています。

 

 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(1/24/2024)

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