産経新聞に嬉しいニュースを見つけた。秋田市で60年振りに出前されたラーメンどんぶりが街の食堂に帰り着いた。
事の顛末はこうだ。60年前、地元の菅谷さん一家が借家から引っ越す際、近所の「まさご食堂」からラーメンの出前を頼んだ。何らかの事情で、ひとつだけ引き取りに来なかったどんぶりを転移先まで持って行ってしまったらしい。その後も県内を転々としたが、その度に母親は「このどんぶり投げ捨てられないから。」と口癖のように繰り返していたそうだ。息子の菅谷司さんは東京で会社経営をしていたが、東京での生活を清算して秋田の実家に戻った際「まさごのラーメンどんぶり」を発見。母の言葉を思い出し、返却する事に。店主の佐藤さんも大喜びの60年振りの帰還となった。
記事を読んで嬉しくなった。たあいのない出来事かも知れないが、これが良いのだ。考えると、出前食器の文化など間もなく日本から無くなるのでは。出前システムも、ケータリングのピザ、ハンバーガー、お寿司、幕の内弁当、鰻重、みんな回収の手間が必要ない紙やプラスチックの容器になってきている。私の出前生活でもかろうじて残っているのが日本蕎麦屋の大好きな鍋焼きうどんを頼んだ時ぐらいだ。瀬戸物器は無くなるのでは。セキュリティーのしっかりしている高級マンションは汁もの出前は敬遠されているらしい。ラーメンの汁を廊下にこぼす前例があり住人からクレームが入り出禁のお店も。出前ラーメン危うし!そう考えると60年振りにどんぶりが返ってくるニュースなんて今後二度と無いビッグニュースなのかも。
ところで、最近ある住宅地で夜一人?で散歩している猫を見かけた。品の良い毛並みと顔立ちから、野良猫では無く由緒ある育ちなのは一目で分かった。どうやら屋敷の勝手口の隙間から夜な夜な出没するらしいが、2度ほど帰宅途中の車で遭遇した。都会では「猫の夜中の散歩」ほとんど見かけなくなっていたので嬉しくなる。昔は瓦屋根に各家の猫たちが集合して「ニャーニャー」の大合唱をよく聞いたものだ。当時の猫たちは人間慣れして図図しかった。私が近づいても動こうともせず「私の縄張りにこないでよ!」の目つきで睨まれた。しかし先日の箱入り猫は私を見て一目散で逃げて行った。仕方がないけど…。もっと良い環境があれば普段から堂々と夜遊び出来るのに。とは言っても交通事情も大きく変化して吞気に散歩にも出られないかも。まして飼い主は心配ですよね。
そんな事をボーっと考えながら私毎日過ごしています。アメリカでも猫の一人歩きあるのかな?
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。