世界が認める「平和国家」に 日本がランクイン

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アメリカ101 第204回

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「日本がスイスを抑えて、『世界で住むのに最も平和な国家』(The Most Peaceful Country 2023 )リストの第9位にランクされた」というニュースが今年6月末に報じられました。筆者のような後期高齢者にとって、ヨーロッパの永世中立国家スイスには特別の思い入れがあります。第二次世界大戦で敗北、文字通り全国の主要都市が焦土と化した日本が、新たに目指すべき国家としてスイスが注目を浴びた時期であったからです。それから4分の3世紀が経過して、そのスイスを抑えて、主として西ヨーロッパ諸国に混じって日本が「平和国家」トップ10入りしたというのですから、お赤飯を炊いて祝うべきでしょう。

小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年という「六三三四制」の戦後の新しい教育制度が採用されたのが1947年で、その「第一期生」として、その年の4月に小学校に入学したのですが、国家として新たな出直しの模範となるのがスイスだというのが流行した時期でした。

それというのも、同年5月に片山哲・社会党書記長が、当時“進駐軍”のトップで、文字通り日本統治の全権を掌握していた連合軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥を訪れた際に、同書記長がキリスト教徒であることを喜び、「日本は東洋のスイスとなるべきだ」と言ったというので、「東洋のスイスたれ」というのが流行することになります。スイスがハリネズミのような“超完全武装国家”であるのは知らずに、戦争を放棄した新憲法の下で、“平和教育”を受けた筆者の世代にとっては、スイスは理想的な国家として映ったものでした。

当時は、東京の中央線阿佐ヶ谷駅に近い裁判官宅の二階に一家六人が仮住まいしており、最寄りの小学校はバラック建築で、生徒全員が収容できず、午前組と午後組の二部制という時期です。

「平和国家ランキング」(Global Peace Index)は、オーストラリアのシドニーに本部のあるシンクタンク「経済平和研究所」(Institute of Economics and Peace=IEP)が毎年作成しているもの。イギリスのニュース週刊誌「ザ・エコノミスト」(The Economist)傘下の組織を主体に、専門家を起用してランキングを作成、世界163カ国が対象の2023年版が6月に発表となりました。

「内戦の数」「対外戦争による推定死者数」「近隣諸国との関係」「内戦による推定死者数」「国内総生産=GDP」「政治的不安定さ」「殺人事件数」「軍人の数」「重火器の数」など23項目について分析しており、この種の調査では最も注目されるランキングです。

2008年以来継続して調査結果を発表していますが、最新版では全体として「グローバルな平和度数」が0・42%下落となっています。この数字だけでは「例年並み」というわけですが、懸念されるのは、過去15年のうち13年が「平和度」が下落しており、調査を開始して以来では5%下落となっている点です。例えば難民(国内難民を含む)の総数は8500万人にも上り、国内人口の5%以上が難民という国が15カ国にも達しています。そんな中で、内戦が続くアフガニスタンが6年連続で「最悪国家」で、以下イエメン、シリア、南スーダンと続きます。

一方「平和国家」のトップはアイスランドで、そのあとデンマーク、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、ポルトガル、スロベニアと続き、9位が日本で、10位がスイスというわけで、敗戦当時には夢想だにしなかった世界が認める「平和国家日本」が現実となっています。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(10/3/2023)

 

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