アメリカのエリートに白人が多い理由「Legacy Admission」

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アメリカ101 第195回

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長年にわたりアメリカのエリート養成に大きな役割を演じてきた、有名大学でのOB(卒業生)子弟に対する入試選考での優遇措置であるLegacy admission(レガシー/遺産/継続入学)が、人種差別の観点からやり玉にあがっています。  7月3日には、「公民権擁護弁護士団」(Lawyers for Civil Right=LCR)など3つの人権擁護団体が、連邦政府教育省に対してハーバード大学でのレガシー入学の実態調査を求めたことが明らかになりました。また、経済学者で元財務長官、同大学学長も務めたラリー・サマーズも同月1日付けのワシントン・ポスト紙に寄稿、レガシー入学廃止など、白人志願者に有利となる一連の提言を明らかにしました。

アメリカでは公立、私立を問わず各大学とも、その財政基盤を固める目的で、卒業生からの寄付金を集めるのが不可欠であるため、その代償としてOBの子弟入学を積極的に推し進めるというレガシー制度を採用してきました。大学教育が長年にわたり白人子弟の教育の場であったことから、寄付金集めも主として白人からのものであり、結果的に白人学生に有利な制度となっており、大学教育の多様化に反する制度ではないかというわけです。

例えばアメリカの代表的なエリート大学であるハーバード大学では、2014年から2019年までの5年間で、入学志願者のうち、入学選考での全体の合格率はわずか6%なのですが、レガシー志願者は、その5倍の33%という“広き門”となっています。親や親族にOBがいれば、その子弟の合格のチャンスは格段に高くなるのが現実です。

そしてアメリカでは、このような一種の“縁故入学”が、リベラルアーツの名門校であるアマースト、ウェズリアン、ブリンマー、オーバリンといったカレッジではほぼすべて、ハーバード、プリンストンといった総合大学の間でも、その4分の3が採用しているようです。その対象範囲も、子息だけでなく、孫や甥なども含むところもあります。

このようなレガシー入学は、1920年代からエリート大学の間で、従来の白人・アングロサクソン系学生が中心の人種構成だったものが、ユダヤ人やカトリック教徒、アジア系の学生が増加するのを懸念して採用した方式です。

ちょっと古い統計ですが、1992年の調査では、当時のUSニュース・アンド・ワールドリポート誌の大学ランキングにリストアップされたトップ75校のうち、レガシー入学制度を採用していないのはカリフォルニア工科大学(CalTech)などわずか数校でした。

レガシー入学の対象となるのは、圧倒的に白人私立高校出身のキリスト教プロテスタント教徒です。プリンストン大学では2000年のレガシー新入学生567人のうち、ラティーノが110人で、黒人はわずか4人だったとのことで、レガシー入学制度が白人学生を優遇する結果となっているのは間違いありません。

LCRなどの要望書では、ハーバード大学でのレガシー入学志願者および大口寄付金出資者の70%が白人であるとして、白人優位になっていると指摘。教育省に対しては、同大学でのレガシー入学の実態調査を求め、同大学がレガシー入学制度を廃止しない場合には、連邦政府による財政支援の打ち切りを命じるよう求めており、アメリカでの大学入学プロセスは転機にあるようです。

 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(7/18/2023)

 

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