カラスの事、考えてみた。朝の散歩でよく近所の公園に行くのだが、必ず遭遇するのがカラス。それも大量に。近頃のカラスは人馴れしているのか逃げない。近くを歩いても全然動じない。まじまじ見るとデカイのだ!全身真っ黒。鋭い口ばし。夕方人が少なくなると、更に沢山のカラスが舞い降りてくる。正直怖い。子供達も怯えている。こんな風景は日本中で今や当たり前の出来事。いつから人間はカラスを警戒するようになったのだろう。
童謡に名曲「七つの子」(作詞 野口雨情/作曲 本居長世)がある。この歌を唄っていた子供の頃はカラスに良い印象があった。詩の内容も素晴らしい。「カラスなぜ鳴くの カラスは山に 可愛い七つの子があるからよ 可愛い可愛いとカラスは鳴くの 可愛い可愛いと鳴くんだよ 山の古巣へ行ってみてごらん 丸い目をしたいい子だよ」 子どもの頃、誰でも一度は唄った事があるのでは。そうなんです、カラスは日本の原風景には必要な鳥だったのです。それがいつの間にか悪者になっている。それって黒いから?ゴミを漁るから?目が鋭すぎるから?鳴き声が大きいから?
カラスが純白だったり青い鳥だったら、こんなに嫌われなかったかもしれない。都会で産まれたカラスの赤ちゃんは、童謡のようには人間に愛されない。人間界をどう見ているのだろうか。生まれてくるなり嫌われる存在の自分達をどう理解するのか。パンダやシロクマの誕生には大騒ぎするのに、カラス誕生の話は誰もしない。これじゃカラスもグレます!
せめてアニメの世界だけでも「スーパーカラス」の誕生はないのか。人間の言葉を巧みに話すスーパーカラスが、ある時は夫婦共稼ぎの為にいつも一人ぼっちの子供の処に飛んで来て遊び相手になってくれる。学校でイジメに遭って登校出来ない子を励まし守ってくれる。ある日は新橋の飲み屋でサラリーマンの愚痴をお酌をしながら聞いてくれる。そうなんです、スーパーカラスがいたら、人々のカラスに対する気持ちが少しは変わるかもしれない。ディズニーランドのミッキーマウスだってネズミがモデルだが、世界中で愛されている。ネガティブからポジティブに見方を変えるだけで価値観を変える事が出来る。身近で苦手だなと思っている物を別の角度で見ると世界が変わります!
ちなみに作詞家野口雨情さんの作品は「赤い靴」「雨降りお月さん」「シャボン玉」「兎のダンス」「青い眼の人形」「あの町この町」等、数えきれないほどの名作ばかり。インターネットで聴くことができるので皆さんも是非聴いてみてはいかがでしょうか。汚れのない童心に戻れますよ。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。