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アメリカ101 第161回
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こんな報告、報道に接すると、「政治」「外交」といった仰々しい“仕組み”の舞台裏を垣間見ることができて、意外に身近に感じられるから不思議です。それというのも、ドナルド・トランプが大統領だった2017年1月から2021年1月までの時期に、トランプが当時所有していた、ホワイトハウスへは歩いて10分程度の最高級ホテル、トランプ・インタ−ナショナル・ホテルに、マレーシアや中国、トルコ、サウジアラビアといった6か国の政府要人が宿泊するなど利用していたことが明らかになり、これが合衆国憲法に違反するのではないかとの疑惑が浮上しているからです。
自国に有利な扱いを相手国に求めるのが外交の原則なのでしょうが、そんな外国政府がアメリカの最高権力者である大統領の所有するホテルに宿泊し、高額な滞在費を支払うことで、その“歓心“を買うという行為は、当たり前といえば当たり前なのでしょう。しかしトランプ側にしてみれば、間違いなく利益を得ているわけで、「アメリカ政府から報酬あるいは信託を受ける職務についている、いかなる者は、議会の同意なしには外国からは贈与、報酬、公職ポストを受けてはならない」という憲法第1条第9節8項に違反する可能性も指摘されています。
このようなトランプ政権当時の疑惑を改めて取り上げたのは連邦下院監視委員会で、その詳しい内容をニューヨーク・タイムズ紙が伝えています。トランプといえば、今月8日の中間選挙で、その支援を明らかにしていた何人かの立候補者がすべて落選するという「ご威光失墜」を味わったばかりで、この報道も、その政治家としての資質に疑問を投げかけるものでしょう。公職にある人物が外国からの贈答や報酬を受け取ることは不可とする憲法の条文は、「報酬条項」(enoluments clause)と呼ばれるもので、外国からの腐敗行為のアプローチには断固として拒否するとの建国以来の独立国家としての毅然とした矜持を表現しています。
下院監視委員会が14日に公表した一連の文書によると、2017年から2018年の間に、それぞれアメリカとは懸案を抱えていたマレーシア、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、中国の6か国の政府高官がトランプ・ホテルに一泊1万ドルという法外な料金で宿泊していたとのこと。とくにマレーシアの場合は、「世界最悪の汚職事件」といわれたスキャンダルである1MDB(ワン・マレーシア・デベロップメント・バーバド=1マレーシア開発株式会社)をめぐる汚職事件の中心人物ナジブ・ラザク首相とその家族、随行団が2017年9月に訪米した際、トランプ・ホテルに宿泊、少なくとも総額25万9000ドルを支払っています。トランプは同首相との会見の席上、「アメリカでの貴殿のすべての投資」に感謝の意を表明したというのも、むべなるかなです。さらに政府代表団のホテル内でのコーヒーブレイクに9000ドル、ルームサービスによる3回の昼食に8000ドル、パーソナルトレーナーに1500ドルといった支出もあったとの記録が残されています。
下院監視委員会は10月にも、トランプの護衛にあたるシークレットサービスの要員がトランプ系ホテルに泊まるのが当たり前で、一室あたり一泊1185ドルで、2017年に就任して以来総額140万ドルに達したことを明らかにしており、トランプの“傍若無人”’ぶりが露呈しています。
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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(11/15/2022)
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