摂氏/華氏 ピンとこない「110°Fの酷暑」がやってくる

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アメリカ101 第150回

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アメリカ生活は通算すれば半生に及ぶのですが、その長さにもかかわらず依然として「アメリカ人」に成り切っていません。

 

まずは英語です。中学校で学び始めて、社会人になってからは、日常的に英語を通じたジャーナリストとしての仕事に携わってきました。しかし「読み書き」のうち、「書き」がからっしきダメで、「英作文」のレベルから脱していません。

 

そして日常生活で毎日のように「取り組む」といった感じの“度量衡”の違いへの戸惑いです。アメリカではサイエンスの分野は基本的には国際的な基準であるメートル法を採用しているものの、日常的には依然としてヤード・ポンド法や、気温/温度の華氏表記となっていて、違和感は拭えません。このため常に摂氏に「翻訳」しないと消化できない有様で、南カリフォルニア一帯が今週末から来週にかけて厳しい暑さに見舞われるとする気象予報で、「triple‐digit tempreratures」という「100度を超える猛暑」と言われても、摂氏30度を上回る暑さといった程度の理解で、37.77°Cだというイメージは浮かびません。

 

そんな個人的な“理解度”とは無関係に、南カリフォルニアでは9月1日(木)から各地で100°Fを大きく超える観測地点が増えてくるとの予想です。中でも、暑さでは「悪名高い」ウッドランドヒルズやランカスターでは110°Fという記録的な猛暑が同日と9月4日(日)に予想されています。摂氏で43.33°Cというわけで、日本での記録した最高気温41.0°C(2013年8月12日、高知県江川崎)をは
るかに上回っています。日本での最高気温は1933年7月25日に山形市で記録した40.8°Cが74年間にわたり最高記録となっていました。実は筆者は小学校5年生から中学1年生まで山形に住んでいたのですが、東北に位置するものの、周囲を山で囲まれて盆地に位置し、フェーン現象で異常な高温を記録したもので、その仕組みを勉強した記憶が鮮明に残っています。

 

ちなみにアメリカでは「不動の猛暑地点」であるデスバレーで1913年7月10日に記録した56.7°Cが最高気温で、同時に信ぴょう性のある世界最高気温とされています。デスバレーはれっきとしたカリフォルニア州内の「名所」のひとつですが、南北に同州には長く伸びる同州には、夏場に何十日もアメリカの最低気温を記録する場所として知られるボディ(Bodie)があります。レークタホの南120キロにあり、一時はゴールドラッシュで沸いたゴーストタウンで、毎年7-8月には、全米最低気温の地点としてデスバレーとペアで同じ日に最低/最高気温地点として記録されることがしばしばあります。気象面でのカリフォルニア州の多様性を象徴するものでしょう。

 

多様性といえば、北のベンチュラからロサンゼルス、そしてオレンジ、サンディエゴと続く沿岸と内陸部との気温の高低の差は、南カリフォルニアにしばらく居住すれば、肌で感じることができるのは、皆さんが実感するところでしょう。そして8月30日(火)付のロサンゼルス・タイムズ紙の気象情報ページを一瞥すれば数字で明らかです。前日29日はサンタバーバラからオクスナード、サンタモニカ、トーランス、ラグナビーチ、サンクレメンテ、サンディエゴまでの沿岸都市ではおしなべて最高気温は70°F台から80°Fと過ごしやすい気温ですが、サンタモニカ山脈を一つ越えたウッドランドヒルズは103°Fの酷暑です。ポモナ、オンタリオ、チノといった内陸部の観測地点はすべて100°Fオーバーとなっています。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(8/30/2022)

 

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